本州と九州の間にある「関門海峡」。
数々の歴史の舞台になってきたこの海峡には、人が通れる海底トンネルが設置されているため、歩いて渡ることができます。
また近年は、レンガ造りの洋館が残る門司港駅周辺も「門司港レトロ」として人気の観光地になりつつあります。
今回は、関門海峡の地下トンネルを歩いて渡り、このエリアをぐるりと一周してみた様子を紹介します。
関門海峡クローバーきっぷ
本州側には「壇ノ浦」や「巌流島」、九州側には「門司港レトロ」、そしてその間を歩いて渡ることができる「人道トンネル」があるなど、関門海峡周辺には訪れてみたいスポットがたくさんあります。
そんな場所を訪ね歩くのにピッタリな、関門海峡をぐるりと一周できる切符があるのですが、それが「関門海峡クローバーきっぷ」です。
価格は800円とお手頃で、時間的にも2時間ほどで海峡の主な観光地を一廻りできるので、気楽に楽しむことができると思います。
今回は、この「関門海峡クロ-バーきっぷ」を使って、関門海峡周辺を巡ってみました。


九州鉄道記念館

今回の出発地点は、門司港駅のすぐ近くにある「九州鉄道記念館駅」です。
ここから、北九州銀行レトロライン「潮風号」に乗って海峡一周に出発します。
次の列車まで少し時間があったので、「九州鉄道記念館」を見学してみました。(料金 大人300円 時間 9:00~17:00)

門司港駅に沿うように広がる広い敷地には、様々な懐かしい列車が展示されています。
本館の内部にも入ってみました。




昔の様子を再現した車両や模型の列車が走るジオラマ、列車や駅に関連したグッズなど、懐かしい鉄道関係の品々が展示されています。


敷地内にある「ミニ鉄道公園」では、こんなかわいい車両に乗ることもできるので、子どもたちも楽しめそうです。


古い車両の運転席に座れる展示もあり、なかなか充実した鉄道博物館でした。
トロッコ列車に乗って海峡へ

北九州銀行レトロライン「潮風号」

列車の時刻が近づいたので、駅に戻ってきました。

故・松本零士氏の追悼の取り組みということで、駅員さんたちは「銀河鉄道999」のコスプレで案内をしていました。

なお、この列車は夏休み中などを除くと基本的に土日祝日のみの運行なので、運行日をしっかり確認しておく必要があります。


乗客は子ども連れの家族が多かったです。駅員さんが手を振って見送ってくれました。

市街地を抜けると、車窓には海峡の景色が広がります。

トンネルに入ると、車内に青い海の中の世界が浮かび上がる演出もありました。

10分ほどの走行で「関門海峡めかり駅」に到着です。


「関門トンネル人道入口」に向けて、海辺の歩道を歩いて行きます。



海峡を行き交う船を見ながら歩いていくと、「関門橋」が間近に迫ってきます。



関門橋のすぐ下にある「和布刈神社」から車道へ上がると、人道トンネルの入口があらわれます。
関門海峡人道トンネルを歩く


トンネルへの入口はエレベーターになっていて、ここから地下へ降りていきます。


ここには自動車用のトンネルが通っているのですが、その下に人が通れる歩道も設置されています。

エレベーターを降りたホールに記念のスタンプがあったのですが、半円形になったあまり見かけないものでした。
これは、トンネルの両端に丸いスタンプの半分ずつが置かれていて、両方で押すと合わせて丸い円形になるといったものでした。そんなスタンプが2種類ありました。

下関側に向けて歩き始めます。騒音などはなく、わずかに話し声が聞こえるくらいで静かでした。

自転車は走れないようですが、降りて押して歩けば通れるようです。

トンネルの長さはおよそ780m。10分ほどの地底散歩です。

トンネルの中間あたりに、山口県と福岡県の県境があります。
多くの人が、ここで県境を跨いだりして記念写真を撮っていました。

「海面下58m」と表記されていますが、そういう感覚はまったくありませんでした。


本州側の地下ホールに着くと「国道2号線」の表示があり、この歩道も立派な幹線国道の一部であることを示していました。
観光客も多いし、トレーニングウェアで足早に歩く地元の方らしい人もいて、秘境的な感じはなく、長いけれど普通に「地下道」といった感じの道でした。
そして、このすぐ上を車が行き交っているということを実感することもない静かな空間でした。

本当に簡単に、歩いて海峡を渡ってきました。
地上に出ると、さっきまで見ていた景色を反対側から見ることになります。

トンネル入口の目の前には、「壇ノ浦」の海岸が広がっていました。
壇ノ浦から唐戸へ
壇ノ浦

壇ノ浦の海岸周辺は公園として整備され、源平合戦の武者たちの像が立っています。
狭い海峡には潮の流れが見えていて、この流れの中でどんな戦いが繰り広げられたのだろう、としばし思いを馳せます。


像の前には、大河ドラマに出演し平家の役を演じた役者さんたちの手形が設置されていました。


またここは、幕末に長州藩と欧米列強との戦いが行われた場所でもあり、復元された「長州砲」が並んでいました。

ここでの敗戦が、長州が開国・倒幕へと転換するきっかけになったと言われています。
見ていたら、急に大きな音が鳴り煙があがってびっくりしました。そんな演出をする装置が付いているようです。
サンデンバス

ここからは、門司港へ向かっての帰り道になります。「サンデンバス」に乗り、「唐戸」の港へ向かいます。
バスは10分に1本くらい走っているので、待ち時間を気にすることなく利用できると思います。


下関グランドホテルの前にある「唐戸バス停」で下車します。
ホテルの裏へ回ると、「関門汽船」の桟橋が見えてきました。
関門汽船


門司港行きは、こちらの関門汽船唐戸1号桟橋から20分に1本運行されています。

門司港からの便がやってきました。折り返し運行しているので、乗客が下船するとすぐに乗船が始まります。
天気がいいので、展望のよい屋上のデッキに上がりました。


港を出ると、関門橋が見えてきます。



関門橋を眺めながら、10分ほどの航海で門司港に到着しました。
門司港レトロを巡る

門司港へ戻ってきました。上陸して「門司港レトロ」を散策します。
「ブルーウィングもじ」は歩行者専用の跳ね橋で、門司港レトロを代表するスポットのひとつです。

木造の橋をのんびりと渡っていきます。開閉する時間を過ぎてしまっていたので、跳ね上がる様子を見ることはできませんでした。


レトロな建物の向こうにひときわ高く聳える「門司港レトロハイマート」の展望室に昇ってみました。(入場料300円)





眼下には先ほどまで見ていたレトロな建物が並び、関門海峡や門司の街を広く見渡せる絶景スポットでした。



水辺を歩いて門司港駅へ戻っていきました。



「門司港駅」へ戻ってきました。
こちらの駅舎も歴史ある見事な建物ですが、今も現役で使用されていて、レトロな美しい佇まいを残しています。
駅員さんたちの制服もレトロ感あふれるもので、街全体で雰囲気を創り出そうとしていることがうかがえました。


おわりに

様々な乗り物に乗り、歴史的な場所を訪ね、海底トンネルで海を渡り、レトロな街並みを歩くという、盛りだくさんの旅でしたが、ゆっくり見て回っても半日ほどというコンパクトなルートで十分に楽しめました。
子ども連れでもカップルでも年配の方でも、どんな方々も「小さな旅」が楽しめるバラエティーに富んだおすすめのコースだと思います。