京都市北部の山深い里「大原」は、古くから寺院が開かれ、隠棲の地としても知られた場所です。
静かな山里には、長い時の流れを経た趣のある寺院たちがひっそりと佇んでおり、そんな寺院を巡ってみました。
今回は、京都市大原にある、二つの古刹について紹介します。
京都北部の山里 大原

「大原」は、京都北部の山中にある小さな盆地で、落ち着いた佇まいの寺院がひっそりと点在しています。
近年は海外から訪れる人も増え、多くの観光客で賑わう人気のスポットになっています。
ここを訪ねる場合の公共交通機関は「バスかタクシー」に限られますが、それぞれの寺院はけっこう離れているので、できれば自家用車で訪れるのがおすすめだと思います。
ただし、三千院などの寺院があるのは、山側の斜面など盆地の中心からは少し入り込んだ場所になるので、寺院の近くまで車で行く場合には、大変細い道を運転していくことになります。
また、国道沿いの駐車場に駐車して徒歩で訪れる場合は、寺院まではそれなりに坂道を歩くことになりますので、その心づもりをしておいた方がよいと思います。
大原でも代表的な寺院である「三千院」は、国道沿いの駐車場からは500mほどあり、坂道を10分ほど登ることになります。
三千院

「三千院」は延暦寺に起源をもつ天台宗の寺院で、皇室とも関わりのある格式をもち、苔の美しい落ち着いた雰囲気の庭園で知られています。
大原は平安時代以来、多くの貴人・文人が、京の街を離れて隠棲したという里ですが、苔むした庭園を歩くと、そんなこの地の歴史と雰囲気を感じることができます。
昭和41年(1966年)に、デューク・エイセスという男性コーラスグループが歌った「女ひとり」という曲がヒットし、「三千院」が広く知られるきっかけになったそうです。
♪ 京都 大原 三千院 恋に疲れた 女がひとり・・・
これは曲の冒頭の歌詞の一部ですが、このイメージが今も定着しているのでしょうか、訪れている人たちには、一人で訪れている女性がけっこういるという印象がありました。
しかし現在では、大量のインバウンド客で賑わっているため、あまり目立つことはないだろうと思います。
今回は、自家用車で三千院の近くまで行きました。
途中の道はけっこう細いので、すれ違いには気を使いました。運転に自信のない方は、麓の駐車場にとめて歩いて行った方がよいかもしれません。

三千院まであと少しの場所でたくさんの参拝者が道いっぱいに歩いてきたので、車はここまでにして近くの駐車場に駐車しました。
このあたりには小さな駐車場がいくつもあり、だいたいどこも1回500円ほどです。

道を進み、呂川を渡ると、「三千院門跡」と刻まれた石柱が立つ石段を登っていきます。


土産物店が並ぶ参道を進むと、右手に「御殿門」があらわれます。

こちらが三千院の入り口になります。

入口で靴を脱ぎ、靴は袋に入れて持っていきます。
三千院の拝観料は、大人700円です。(3月から10月の拝観時間 9:00~17:00)

中書院を通り「客殿」に出ると、目の前に庭園「聚碧園」の景色が広がります。

客殿では、縁側に腰かけて、庭園を眺めながら抹茶をいただくことができました。

訪れた日は外国人観光客で賑わっており、静かな落ち着いた雰囲気ではありませんでしたが、大原らしいひと時を過ごせるスポットだと思います。


建物内を進み「宸殿」まで来ると、一面の苔に覆われた庭園が広がってきます。
ここで再び靴を履き、院内を巡っていきます。



苔に覆われた庭園の道を進み、「往生極楽院」へ向かいます。


三千院の中心ともいえる「往生極楽院」は、質素な雰囲気が周囲の庭園に溶け込んでいる美しいお堂です。
内部には、天井にとどくのではないかと思うような、建物に比べてちょっと大きめな「阿弥陀三尊像」が安置されています。
こちらは建物が重要文化財、「阿弥陀三尊像」は国宝に指定されています。


かつては正門であった赤い「朱雀門」の前を通り、「延命水」から坂道を上がっていきます。


金色不動堂の前を通り、観音堂へと庭園の道を登っていきます。


金色の観音像が安置された「観音堂」の前には、蓮の花が美しく咲いていました。


季節にはアジサイの花が美しいという庭園の道を通って、苔庭へ下っていきました。



拝観順路は建物には戻らず、このまま出口へと向かいます。ゆっくり巡りましたが、およそ1時間ほどの静かな散策でした。
混雑する時期を避ければ、心静かに落ち着いたひと時が過ごせると思います。
寂光院

続いて、寂光院へ向かいます。
三千院は盆地の東端にあり、寂光院は盆地の西端にあるので、移動距離は約1.6kmあり、徒歩での移動だと30分程度の時間がかかると思われます。車での移動だと10分ほどです。

寂光院は谷間の奥にあり、ここへ向かう道もかなり細いので、対向車とのすれ違いには場所を選ぶ必要があります。運転に自信のない方は避けた方がよいかもしれません。

寂光院の少し手前にある駐車場に駐車して、最後は歩いて行きました。この近辺にもいくつか駐車場がありますが、料金は1回300円ほどです。

建礼門院徳子の墓所などがある通りを進んでいきます。


しば漬などが並ぶ店の向かいに、「寂光院」への入口がありました。
ちなみに、こちらの店で試食を勧められしば漬をいただきましたが、優しい味付けがおいしく、帰りにお土産に購入しました。気さくなご夫婦が営む店です。


寂光院の拝観料は大人600円です。(3月~11月の拝観時間 9:00~17:00)

受付を済ませ、生垣に囲まれた緩やかな長い階段を登っていきます。

やがて、石段の先に門が見えてきます。

門の手前にあるこちらの奥にも庭園があり、休憩所も設けられています。


門をくぐると、庭園の向こうの正面に、森を背景にして「本堂」が建っています。
訪れるまで知らなかったのですが、この本堂は2000年の火災で焼失し、その後再建されたものだそうです。
しかし、歴史を感じさせる落ち着いた佇まいがあったのは、残った部材を使い、できる限りすべて元通りに再建しようとした熱意の表れかもしれません。

「書院」の前では、抹茶もいただけるようでした。

こちらの鉄製の燈籠は、豊臣秀吉が本堂を再建した際に伏見城から寄進されたものと伝わっています。

靴を脱いで本堂に上がります。


本堂では、院主の方でしょうか、この寺の歴史や仏像、建礼門院のことなどを、丁寧に説明してくださいました。

「寂光院」は、古くは聖徳太子の建立と伝わる天台宗の尼寺ですが、何といっても「平家物語」の舞台となったことで知られています。
ここは、平家の繁栄と滅亡の果てに、平清盛の娘であり安徳天皇の母であった建礼門院徳子が身を寄せ、亡き者たちの菩提を弔いながら隠棲した地でした。
密かに訪れた後白河法皇と世の無常を語り合う場面は、平家物語最後の名場面です。

「諸行無常」などという言葉は、はるか彼方へ去ってしまったような時代ですが、歴史は今も様々なこの世の在り様を見せてくれます。



西門を出て少し行くと、山際の平地に「御庵室遺蹟」の石碑が建っています。

徳子が隠棲したと伝わる庵の跡が、今もひっそりと残されています。
京都の山里で、静かな古刹を訪ね歩いた心安らぐ旅でした。

