かつて江戸の街で「西の富士、東の筑波」と並び称されたように、古くから親しまれた名峰「筑波山」。
標高877mの低山ですが、関東平野の一角に独立峰のように聳えるその姿は、その標高よりもはるかに強い印象を私たちに与えてくれます。
古くから人々が集う特別な山でしたが、様々な開発が進んだ現代においても、その特別感は変わりません。
今回は、老若男女誰もが楽しめる究極の低山、「筑波山」についてです。
多種多様な人々が集まる山
古くからの信仰の山であり、ケーブルカーありロープウェイありの観光地。いくつもの登山道がありハイカーも多数やって来る。そして関東平野の展望台とも言えるロケーションを兼ね備えている筑波山。
こんなにも多彩な顔を持つ山を、他には知りません。
筑波山についてはたくさんの情報が簡単に入手できるので、ここでは詳細は紹介していませんが、登山だけではない、いろいろな「楽しみ方」を改めてまとめてみたいと思います。
小さな山ですが本当にたくさんの面をもち、楽しみ方は様々です。
歴史ある山
筑波山は「常陸国風土記」に登場し、「万葉集」にも詠まれる古くから知られた山です。
中世には修験道の道場になり、近世では信仰と共に観光地としての側面も備えた筑波山は、現在も変わらない賑わいを見せています。
二つの山頂と麓にあるそれぞれの「筑波山神社」を訪ね歩く、という楽しみ方もよいかもしれません。
乗り物と観光
筑波山は「ケーブルカー」と「ロープウェイ」が両方設置されているという全国でも珍しい山で、人気の観光地になっています。
交通機関が充実しているので、誰もが負担なく簡単に頂上に立つことができ、これも筑波山に人々が集まる理由です。
ロープウェイでは、10月〜2月の土日を中心に「スターダストクルージング」という夜間運行が行われており、「夜景スポット」としても知られるようになりました。
ケーブルカー山頂駅付近の「御幸ヶ原」には、食事からお土産まで、様々な店舗がそろっており、観光地としての施設も充実しています。
ハイキング
ところで、筑波山は「日本百名山」の一つに数えられていますが、その中では最も標高が低い山です。
しかし、標高数百mの低山にもかかわらず選出されていることに、異論はないだろうと思います。
関東平野の彼方に、夜明けの暁の空を背景に聳える筑波山の美しさは、多くの人々の目を惹きつけ、富士山にも引けを取らない風格をもっているように感じます。
「百名山」ということもあって、山登りを趣味とする人の多くが一度は訪れるのが筑波山なのですが、古い火成岩でできたこの山は、様々な奇岩が創り出す景観や関東平野の展望など、登山者を飽きさせない要素も多く、山登りの対象としても魅力は十分です。
登山道はよく整備されていて歩きやすく、麓から山頂まで2時間程度の行程なので、手軽な日帰り登山を楽しむことができます。
登山道もストリートビュー対応
また、筑波山の主な登山ルートはグーグルマップの「ストリートビュー」が対応しています。
麓の筑波山神社をスタートする「御幸ヶ原コース」や、ロープウェイ駅のあるつつじヶ丘から登る「おたつ石コース」などは、全ルートの様子を画像で確認することができます。
実際の登山道がどんな様子なのか気になる方は、一度見てみるとよいと思います。
定番の楽しみ方「おすすめコース」
乗り物を楽しみながら山頂へ
登山を目的としない場合、「ケーブルカー」や「ロープウェイ」に乗るのも楽しみの一つだと思います。
麓の駅から山頂駅へ、ロープウェイだと6分、ケーブルカーだと8分ほどで標高800mまでの道のりを疲れることなく連れて行ってくれます。
山頂に着いたら、「男体山」「女体山」という二つのピークの両方に登頂してみましょう。
山頂連絡路を歩き2つの山頂へ
筑波山は男体山、女体山という二つの頂を持つ双耳峰ですが、その間には「山頂連絡路」という遊歩道が整備されています。
ケーブルカーで山頂駅のある「御幸ヶ原」まで行った場合、ここをスタートすると男体山までは近いですが登り下りが急坂で、女体山までは少し距離がありますがなだらかな坂道といった感じです。
男体山への登りや女体山の山頂付近には岩場もあり、歩きやすいとは言え登山道と言ってもよい道なので、足元は運動靴か、できればしっかりしたトレッキング用の靴がよいと思います。
両方の頂に登頂するには、歩きや展望を楽しむ時間を1時間程度みておいたほうがよいと思います。ルートの状況はグーグルマップの「ストリートビュー」ですべて確認できます。
自家用車で行った場合
自家用車で行った場合、ケーブルカーでもロープウェイでも同じルートを往復で乗るなら、麓の駅近くの駐車場に駐めるのが便利です。(市営駐車場など多数あり。1回500円)
しかし、ケーブルカーとロープウェイの両方に乗りたいという場合には、筑波山をぐるっと一周する感じになります。
たとえば、筑波山神社周辺の駐車場に駐車した場合だと、ケーブルカーで山頂駅まで登り、二つのピークに登頂した後、帰りはロープウェイでつつじヶ丘まで下りてきて、ロープウェイ駅から公共交通機関などで筑波山神社まで戻ってくる、という行程になります。
ケーブルカー宮脇駅とロープウェイつつじヶ丘駅の間は、路線バスが走っていますし、タクシーを利用することもできます。
一例を挙げると、下のようなルートになります。
筑波山神社周辺駐車場 ‥‥ ケーブルカー宮脇駅 === ケーブルカー山頂駅
(一回500円) (大人片道590円) 約8分
‥‥ 男体山山頂 ‥‥(山頂連絡路)‥‥ 女体山山頂 ‥‥ ロープウェイ女体山駅
(ゆっくり散策して1時間程度) (大人片道630円)
== ロープウェイつつじヶ丘駅 ==(路線バス)==筑波山神社周辺駐車場
約6分 (大人片道330円)約10分
※ケーブルカー、ロープウェイは毎時00分、20分、40分の20分間隔で運行
こうして一回りすると、筑波山の主な神社や乗り物など一通り見たり体験したりすることができ、短時間ですが山歩きも楽しむことができるので、初めての筑波山にはおすすめです。
※料金、時刻等は、2022年1月時点のものです。
服装と準備品
上記のルートを歩く場合の服装や持ち物で、最小限必要なものをまとめておきます。
観光地ではありますが、軽いハイキングが入ってくるので、それなりの準備をしてお出かけください。
天気のよい日であることが前提なので「雨具」は除外しています。晴れた日に行かなければ山の楽しさを味わうことは難しいので、雨の心配がある日はやめておいた方がいいと思います。
服装
・動きやすい服装(季節に合わせた暑くない・寒くない服装)
・防風ウエア(防寒着・手袋)
・運動靴(トレッキングシューズ)
・帽子
服装は、低山なのでそれほど平地と気候が変わるわけではなく、普段の服装で問題ありません。ただ山の上は風が強い場合があるので、風を遮るアウター類は持参したほうがよいと思います。季節によっては防寒着が必要なこともあります。
運動靴は必須ですが、男体山への道や女体山の山頂付近は岩場の部分もあるので、できればソールのしっかりしたトレッキング用の靴がよいと思います。
持ち物
・リックサック
・防風ウエア
・飲料水とおやつ類
・時間によってはヘッドランプも
歩きは1時間程度で荷物もほとんどないですが、それでも背中に背負うリックサックが便利です。飲料水・食料は御幸ヶ原周辺でも入手できますが、一応持っていきたいものです。
おわりに
誰でも手軽に訪れることができる筑波山ですが、歩くことを厭わないなら、密を避けたい状況ということもあり、登りも下りも歩きが一番だと思います。
どちらから登っても、登山道の行程は往復で4時間程度見ておけばよいと思うので、日帰りでも余裕をもって行動できると思います。(登山道の詳細はグーグルマップのストリートビューで確認できます)
やっぱり登山は大変だと思う方や、子どもも含めた家族連れの方などは、ロープウェイやケーブルカーなどの乗り物を楽しみながら、ゆっくりとハイキングするのがよいのではないかと思います。