今年は「中山道」周辺の古い街道を歩いたりしてきましたが、今回は「和田峠」を訪ねてみました。
中山道の最高地点であり最大の難所でもあったこの峠は、ビーナスラインから比較的簡単に訪れることができます。
今回は、秋の和田峠(古峠)と、あわせて三峰展望台の様子を紹介します。
中山道の難所 和田峠へ
旧中山道の難所といえば、「木曽のかけはし、太田の渡し、碓氷峠がなくばよい」と謳われたといいます。
このように「木曽のかけはし」(長野県上松町)、「太田の渡し」(岐阜県美濃加茂市)、「碓氷峠」(群馬県安中市)が、「中山道三大難所」として知られています。
しかし、ここに「和田峠」が入っていないというのは、どうにも腑に落ちないと感じてしまいます。(語呂が悪いので入れられなかったのかもしれません)
和田峠の標高は1,531m。前後の宿場である「和田宿」と「下諏訪宿」の間は約22kmもあり、1日でこの距離と標高を越えなくてはならないのは相当な労力を要するもので、また冬は積雪もあるので、さらに大変であったことは想像に難くないと思います。
そんな中山道最大の難所と言っても過言ではない「和田峠」を訪ねてみました。
ところで、現在の和田宿~下諏訪宿の区間は、部分的に江戸期の旧道が残されていますが、車道を歩かなければならない部分も多く、ハイキングに向いたコースとは言えません。
また今年は、熊による被害件数が過去最多といわれる状況なので、秋の山歩きはひかえた方が良さそうです。
ということで、今回はビーナスラインから和田峠までのごくわずかな部分だけを歩いてみました。
和田宿
峠へ向かう前に、まず「和田宿」を訪ねてみました。
「和田宿」は中山道六十九次の、江戸から28番目の宿場です。
国道142号線から分かれ、県道178号線に入ると、すぐに「和田宿本陣」が見えてきました。
和田宿本陣
幕末の大火で本陣も消失しましたが、皇女和宮降嫁の際の宿泊地であったため急きょ再建され、その一部が現在まで使用・保存され、一般に公開されています。
建物の見学のほか、内部には資料なども展示されていて、かつての本陣の様子を見ることができます。
こちらの開館時間は9:00~16:00で、料金は大人300円。月曜日と11月最終月曜日~3月の冬期間は休館します。
本陣を出て、街道を歩いてみました。
ところどころ古い造りの建物がありますが、全体としてあまり往時を保存している感じではありませんでした。
なお、本陣前から県道178号線を上がっていくと、ビーナスラインに出て「美ヶ原」へ行くことができます。(下記の記事に詳細を紹介しています)
峠への道
国道142号線を登って行き、途中の分岐で「旧道」に入ります。
国道142号線本線は「新和田トンネル」で和田峠の下を通り抜けてしまうため、直進すると旧中山道の和田峠へは行けないので注意してください。
長和町から下諏訪町へ抜けるこの区間は、有料だった「新和田トンネル」が無料化されたことで交通量が増えていると思われます。
和田宿から下諏訪宿の間の「旧中山道」は、現在では国道142号線を歩く部分も少なくないのですが、大型トラックが猛スピードで走っていくので、この道を歩くことはあまりお勧めできないと思います。
旧道に入ると、すぐに江戸時代の街道があらわれ、ここからは旧中山道を歩くことができます。しかし歩く人は少ない感じで、今回は街道歩きをする人に出会うことはありませんでした。
車道をしばらく行くと、茅葺きの建物があらわれます。
ここは「接待」と呼ばれる場所で、冬期間に峠越えをする人馬に粥などの施しをしたため、こう呼ばれるようになったそうです。
この建物も江戸時代末期のもので、道の反対側には湧水もあります。
接待のすぐ近くには「常夜灯」も残っています。
さらに峠道を上っていくと広場があらわれ、廃屋が建っていました。かつて営業していたドライブインのようです。
ここは「東餅茶屋跡」と言われる場所で、江戸時代には5軒の茶屋があったそうです。
東餅茶屋跡を過ぎると大きな分岐があらわれ、ビーナスラインへ続く道が分かれます。
旧和田峠へ行くには、いったんビーナスラインに出るので右方向ですが、とりあえず直進して国道の峠へ行ってみます。
すぐに稜線に沿って走る「ビーナスライン」の橋が見えてきます。
橋を過ぎるとトンネルが見えてきます。旧国道はこのトンネルで和田峠を越えていきます。
このトンネルは幅が狭く、交互通行のため信号が付いています。
トンネルを抜けたところでUターンし、いったん分岐まで戻り、ビーナスラインに入って旧街道の和田峠を目指します。
ビーナスラインに出た所には「和田峠茶屋」が営業しており、無料の広い駐車場があります。
三峰大展望台
空は快晴で、あまりにもよい天気だったので、ビーナスラインを少し走ってみることにしました。
「三峰茶屋」の駐車場に車を駐め、展望台へ向かいます。
周囲には360度の大展望が広がります。
車山の向こうには、八ヶ岳と富士山が見えています。
北には美ヶ原。
間近に「三峰山」が、ササに覆われたなだらかな姿を見せています。
もっと走りたいところですが、本来の目的は「旧街道の和田峠」なので、ビーナスラインはここまでにして和田峠へ戻ります。
和田峠茶屋の反対側には廃屋があり、こちらの駐車場に駐めて峠へ向かいます。
和田峠
ビーナスラインの脇を少し歩いて、旧街道へ入ります。交通量が多い時は気をつけたい部分です。
旧街道に入ると、ササに覆われた林の中の道を登ります。
道はビーナスラインを何度か横切りながら進んで行きます。
木々がまばらになり、前方が開けてくると、間もなく峠が見えてきます。
「古峠」といわれる、旧街道の峠に到着しました。
江戸時代には大名の参勤交代も通った幹線街道の峠ですが、かつての賑わいを偲ぶものはなく、静かに風が吹き抜けるだけでした。
駐車場から古峠まで、ゆっくり歩いて20分ほどです。
峠の西側には広い斜面があり、ここからは中央アルプスや御嶽山がよく見えます。諏訪の市街地も見えていました。
同じ道を通って、駐車場へ戻りました。
ビーナスラインから再び旧国道へ戻り、下諏訪宿への道を下っていきました。
新道に合流し少し下ると、道沿いに「西餅茶屋跡」があります。
こちらにも、かつては4軒の茶屋があったそうです。
このあたりはバイパスを猛スピードで走る車が多いので、車を駐めて見る際には少し離れたところにある駐車スペースを利用するとよいと思います。
下諏訪宿まで歩く場合は、ところどころに旧街道があらわれますが、この国道を歩く部分も多いので注意が必要です。
和田宿~下諏訪宿の旧街道歩きは、今は車道になってしまった部分も多く、車の危険もあるので、歩くのによいコースという感じではありません。
古峠(旧街道の和田峠)を訪れる人も多くはないと思われますが、ビーナスラインの駐車場から20分ほどの手軽な距離感なので、古道への案内などを整備すれば、もっとたくさんの人が気軽に訪れるスポットになるのではないかと思いました。
黒耀石の産地
「和田峠」周辺は、黒耀石の産地としても知られています。
峠の東側、長和町にある「黒耀石体験ミュージアム」を訪ねてみました。
(開館時間:9:00〜16:30 休館日:月曜日 入館料:一般 300円)
ミュージアムは「星糞峠」という黒耀石産地の近くにあります。星のかけらのように輝く黒耀石を、星が残したものと思った人々が名付けた地名なのでしょう。
和田峠周辺は、旧石器時代から黒耀石の産地であったことが知られており、ここで採掘された黒耀石は東日本の各地で出土するほど流通していたそうです。
こちらで採掘される黒耀石は透明度が高く、とても美しい石が多いです。
ミュージアムショップでは、地元産の石を使ってミュージアム内で製作した手作りグッズなども販売されています。
歴史を感じるスポットを巡る、手軽なドライブ&ハイクの旅でした。