北アルプス登山の入門編として、多くの人が訪れる「燕岳」。
花崗岩から成る白く明るい山体から「北アルプスの女王」と呼ばれることもある美しい山です。
間近に槍ヶ岳を望み、北は白馬から南は穂高まで、北アルプスをほぼすべて見渡すことのできる展望のよさも魅力です。
山頂近くの稜線上にある「燕山荘」は、設備の整った山小屋として知られており、登山道も整備されていて登りやすいので、初めてのアルプス登山にはおすすめのコースです。
今回は、燕岳へ自家用車利用で登山する場合の、アプローチの道路状況と駐車場についての情報をまとめました。
※ 燕岳登山の様子はこちらから
県道327号槍ヶ岳矢村線(中房線)
今回、日帰りでの燕岳登山を計画していましたが、天候がすぐれず、山の上は視界ゼロが予想される状況だったので、登山はしませんでした。
合戦小屋で名物のスイカを食べたり、稜線から山々の景色を眺めたりするつもりでしたが、視界のない登山には魅力を感じないですし、燕岳は何度も登っているので登頂へのこだわりもありません。
しかし、せっかく訪れたので、自家用車利用でのアプローチの様子をまとめておきたいと思います。
夏山登山のシーズン中は、中房登山口の駐車場は大変混雑するので、自家用車利用で登山を計画している方の参考になればと思います。
※ 登山の様子はこちらからどうぞ。
山麓線からスタート
燕岳の登山口である「中房温泉」へは、「県道327号槍ヶ岳矢村線」を通って行きます。
この県道は、槍ヶ岳を起点とし、安曇野市穂高有明の県道306号(山麓線)との交点を終点としていますが、槍ヶ岳まで自動車で行ける訳もなく、実質的には有明と中房温泉を結ぶ道なので、通称「中房線」と呼ばれています。
県道327号線(中房線)への入口には、中房登山口の駐車場についての注意を促す看板が立っていました。
実際、夏の混雑時に中房周辺で駐車場を確保するのは、なかなか難しいです。
有明山神社
中房線を走り始め、沿道に民家がなくなると「有明高原寮」があらわれます。有明高原寮はいわゆる少年院ですが、映画「鐘の鳴る丘」のロケ地にもなったそうです。
さらに走って行くと、間もなく「有明山神社」への入口があらわれます。
こちらには、自家用車利用の登山者のための駐車場が設置されています。
有明山神社は、有明山をご神体とする神社で、こちらはその里宮になります。奥社は有明山の山頂にあります。
燕岳の手前に聳える「有明山」は「信濃富士」と言われていますが、いわゆる富士山型に見えるというだけで、火山ではありません。
また、有明山神社の近くには「八面大王」という鬼が立てこもったと伝えられる岩窟があります。「魏石鬼窟(ぎしきのいわや)」と呼ばれているこの岩窟は、大きな石室をもつ古墳とのことです。
余談ですが、安曇野周辺では「大王」という名のついたものを見かけることがよくあるのですが、それはこの「八面大王」にちなんで付けられているようです。
八面大王は、かの征夷大将軍 坂上田村麻呂によって滅ぼされたという伝承が残されていますが、大王の軍勢は中房の山中まで逃れて戦い、それが燕岳登山道のある「合戦尾根」の名の由来だと言われています。
広い駐車場が用意されていて、駐車場の前にはバス停もあります。
有明山神社から進んでいくと、沿道には写真のような立て看板が並んでいて、盛んにバスやタクシーの利用を呼びかけていました。
実際、この先へ進んで駐車場が満車だった場合、路上駐車などをすることになると大変迷惑になるので、夏の繁忙期は早めに駐車してバスやタクシーで行く方が安心だと思います。駐車場が確保できなければ、登山どころではなくなってしまいます。
宮城ゲートを通過します。
乗降する人がいるのか、と思うような場所にもバス停があります。
「中部電力中房第四発電所」を過ぎると、つづら折りの道になって高度を上げていきます。
かなり落差のあるカーブもあり、車高の低い車だと擦ってしまいそうなので注意が必要です。実際、路面には擦り跡が多数ありました。
側面が切り立った崖になった道を進みます。
途中の「観音峠」には、お地蔵様が安置されています。
道はだんだん険しくなって、洞門やオーバーハングの下を走るところも出てきます。道幅も細くなり、すれ違いの車が来ないか気を遣います。
「中部電力中房第五発電所」を過ぎると、「信濃坂」へ向かって登り坂になります。
周辺では道路工事も行われていました。
「信濃坂」を下ると、中房川に沿った樹林の中の道を進むようになります。
路肩に駐車しないように注意喚起する看板が出てくると、間もなく「有明荘」です。
ゲートを過ぎると「燕山荘ケーブル事務所」があらわれ、さらに進むと右手に「有明荘」が見えてきます。
中房周辺の駐車場
有明荘周辺
「有明荘」は、かつては国民宿舎でしたが、現在は安曇野市の指定管理者として、(株)燕山荘が運営しています。
外来入浴もできるので、登山帰りに汗を流していくこともできます。こちらには大きな露天風呂があり、開放的で気持ちがいいです。(大人700円、利用時間10:00~15:00)
有明荘の駐車場とは別に、その先に「第3駐車場」への入口があります。
一般の登山者が利用できる駐車場は、有明荘の周辺に3ヶ所あり、有明荘の裏側には「第3駐車場」があります。
第3駐車場
有明荘入口の少し上にある、第3駐車場への道を入って行くと、駐車している車が見えてきます。
こちらの収容台数は、約30台とのことですが、もう少し駐められるかなといった感じです。
駐車場の奥にはヘリポートがあるため、途中から進入禁止になります。
駐車場の奥には、有明山への登山道入口もあります。
第2駐車場
第3駐車場入口から少し登ると、温泉橋の手前を山の方へ登っていく道があり、これが「第2駐車場」への入口になります。
第2駐車場は山の斜面に3段に分かれていて、駐車台数は約40台だそうです。
こちらの駐車場も、一番奥に有明山への登山道入口がありました。
第1駐車場
さらに、温泉橋を渡った対岸に「第1駐車場」があります。
こちらの駐車台数は約50台とのことで、簡易トイレも設置されています。
なお、燕岳登山口はここから徒歩で10分ほど登った所にありますが、この先には、登山者向けの一般の駐車場はありませんので、第1から第3のいずれかに駐車して登っていくことになります。
中房温泉周辺
中房温泉の入口周辺には、バス終点のロータリーや温泉利用者の駐車場がありますが、一般向けの駐車場はないので、宿泊か日帰り入浴でない場合は、車で乗り入れても引き返すことになります。
中房温泉入口を入ると左手に「燕岳登山口」がありますが、そのすぐ脇には、日帰り専用野天風呂「湯原の湯」があり、登山帰りに汗を流すことができます。(一人800円、利用時間9:30~17:00 受付終了16:00)
関連情報
駐車場
中房周辺の一般の駐車場は無料で利用できますが、早い者勝ちなので確実に確保できるかはわかりません。
夏のシーズン中の休日やお盆の時期はかなり厳しいので、麓に駐車してバスやタクシーを利用することをおすすめします。
しかし、それ以外の時期はまったく空きがないというわけでもないので、保証はできませんが、時期を選んで行けば何とかなる、という感じだと思います。
また、中房温泉か有明荘に宿泊をすれば、駐車場も確保されますので、確実に駐められる方法ではあります。
JR利用の場合の下車駅
燕岳登山口の最寄り駅は「JR有明駅」になります。
列車利用で燕岳登山に向かう場合、ここからバスやタクシーで中房温泉へ行くのが最短ルートだと思うので、有明駅の様子も見てみました。
かつての有明駅は、登山口の駅として急行列車も停車したようですが、今のJR大糸線は1時間に1~2本しか走っていないので、列車でのアクセスは以前よりかなり不便になっていると思われました。
有明駅は無人駅ではないのですが、駅員がいる時間が限られていて、午後の有明駅に人影はありませんでした。
列車の時刻が近づくと数人の乗客がやってきて乗車していき、その列車から下車した人たちが駅を去るとまた無人になる、といった感じでした。
駅前に商店やタクシーの営業所などはなく、本当に何もない駅前なので、「ここで降りて大丈夫か」と思ってしまいましたが、駅前広場の片隅に、タクシー呼び出し専用の電話機が設置されていました。
しかし、かなりの年代物で、今も稼働しているのかは不明でした。
最寄り駅ではありませんが、駅前にタクシー乗り場のある「穂高駅」で下車した方がよいのでは、と思ったのですが、列車利用での燕岳登山の経験がないので、詳細は不明です。(状況報告のみ)
周辺の見学施設
安曇野のアルプス山麓周辺には、様々な観光施設がありますが、その中で、あまり観光客が訪れない穴場の文化施設を二つ紹介します。
安曇野市天蚕センター
安曇野市天蚕センターでは、天蚕飼育の歴史や生態を、ビデオや機具などの資料展示で紹介しています。
また、天蚕糸を使った商品の展示・販売も行っています。
入館料 :無料
開館時間:4月から10月‥午前9時から午後5時、11月から3月‥午前9時から午後3時
休館日 :月曜日と祝日の翌日、年末年始
「天蚕」とは「ヤママユガ」のことで、そのまゆから採れる糸は、淡い緑色をしていて、絹のような美しい光沢をもっています。
生産量が大変少ないことから、希少な織物素材として珍重されており、安曇野市穂高有明地区は日本有数の天蚕糸の産地で、200年の歴史があるそうです。
安曇野山岳美術館
幹線道路から少し離れた、林の中の閑静な住宅地の一角にある、小さな美術館です。
全国唯一の山岳絵画のみを展示している美術館で、展示点数は多くはないですが、山が好きな人なら見入ってしまうであろう作品が並んでいます。
喫茶室が併設されているので休憩を兼ねて立ち寄ることもできますが、閉館時刻が早めなので、山行帰りなどに訪れる場合は注意してください。
入館料 :一般・大学生 700円、 中・高生 300円
開館時間:10:00~16:00(冬期休館/12月11日~3月9日)
休館日 :木曜日(祝祭日は開館)