1月末、スキーヤーがバックカントリーで遭難する事故が相次ぎました。
ゲレンデを出て、雄大な雪の山野を行くバックカントリースキーは魅力的ではありますが、大きな危険と隣り合わせだという事実を改めて突きつけられた感じがしました。
スキー場外に出て滑るのですから、それなりの経験と技術をもっている方々だと思いますが、雪の危険についてどれくらい認識していたのか気になります。
今回は、山の危険を改めて確認し、安全な登山やハイキングを楽しむスタンスを考えたいと思います。
避けるしかない危険
自然の前では、「人間の力など小さなものだ」と感じることはあるでしょうか。
この思いは、自然の中に分け入る人は必ずもっていなくてはならない感覚だと思います。
こうした自然に対する「畏れ」をもっていないと、場合によっては命を落としかねません。
自然界には、人間の力など及ばない、避けるしかない危険がたくさんあります。
たとえば、冬に悪天候が予想されれば、雪に降り込められて身動きがとれなくことが想定されるので、山に入ることを避けます。
事前に長いスパンで予測できれば、行動そのものを回避することを考えるでしょう。
しかし、突発的に起こる危険に対しては、事態が起こってからでは対応が間に合わないため、最悪の事態を予想し、遭わないように用心して行動するしかありません。
避けがたい危険として、私がいつも考慮しているものの代表は「夏の雷 冬の雪崩」です。
遭ってしまったら、後は運次第。どうすることもできません。
基本、これらに対しては、「遭遇しないように行動するしかない」ものです。
熊もそうですが、とにかく出会わないように行動するしかないと考えています。
今回のバックカントリーでの遭難も、「雪崩」によるものでした。
極論すれば、斜面に雪が積もっていれば、何処でも雪崩が起きる危険はあります。
それを踏まえた上で、どうやって回避するのか。雪の状態、気候の状況、行動が引き起こす因子などの十分な知識を得て、最悪の場合の備えをし、あらゆる可能性を考えて行動することが必要です。
かつて冬山で、天候の悪化が予想される中を、逃げるように下山したことがありました。少人数のパーティーだったので、雪に降り込められて動けなくなることを心配しての行動でした。
その後の降雪はそれほどでもなく、「そんなことでは永遠に登頂できないな」と冗談めいて言う先輩もいましたが、こうした判断は、いつも「これでいい」と思っています。
山はいつでもそこにあります。また機会を見つけてチャレンジすればいいのです。
安全に楽しんでこそなので、無理は禁物です。臆病になって、命を守ることを考えるべきだと思っています。
油断しない 無理しない
自然の中では、心に「危険に対するセンサー」をもち、常に警戒しながら行動することが求められます。
そして、個人の趣味である登山は、どうしても叶えるべきミッションがあるわけではないので、心の持ちようでどうにでもなるものです。無理をする必要はありません。
学生の頃、実家に帰ると、山に登る私に母はいつも「やめればいいのに」と言っていました。やはり山へ行くという行為は、周囲から見れば危険で心配なものであったのだと思います。
誰しも譲れないものはあるだろうけれど、周りの人たちの安心という配慮も欠かせない、という思いもあります。
最後に改めて・・・。
臆病でいいんです。危険を感じる感性を磨きましょう。そして危険を感じたら逃げ帰りましょう。そして元気に、また次の山行へと向かいましょう。