平地ではよく晴れていても、山は雲に隠れて見えないということはよくあります。
山に登るのであれば、やはり周囲の絶景を見渡せる日に行きたいものですが、そんな日を選ぶにはどうすればよいのか・・・?
今回は、絶景の登山日を探る方法についてです。
季節によって状況は変わるので、今回は夏山の天気についての内容になります。
山の絶景を見るためには
山行の予定を立てる時、気象予報士のような専門的な知識をお持ちの方を除けば、一般的には「天気予報」を見て決めていると思います。
天気予報の情報は登山には不可欠ですが、絶景の日を選んで登るためには、一般的な天気予報だけでは情報が足りません。
自分でもいくつかのポイントを調べて、判断する知識をもつことが必要になってきます。
「専門的な知識はないけれど、日常的に入手できる情報で少しでも天気のよい日を予測するにはどうしたらよいのか・・・。」
結論から言うと、「こうすればわかる」という簡単な方法はありません。
しかし、気象の知識を得れば、ある程度の予測をして、高い確率で晴れ渡る絶景を見ることは可能です。
ここでは、単に晴れではなく、雲が少なく「周囲の山々が見渡せる晴れた日」を探る方法を考えます。
基本的に中学校の理科で学習する知識を元に、ネットの天気予報サイトなどで手軽に得られる情報で考える、簡単ですが大切な注意点です。
天気予報だけでは山の天気はわからない
天気予報の「晴れ」とは
気象関係で用いられる「晴れ」という基準は、全天の2割に青空が見えていればOKという、一般的な感覚からすればかなりハードルの低い基準に基づいています。
「曇り」というのは、空のほぼすべてが雲に覆われている状態で、雲が多く空の半分以上に広がっていても、天気としては「晴れ」になるので、晴れの予報であっても登山向きの展望の広がる天気とは限りません。
そのため一般的な天気予報だけだと、山の天気の様子を予測することは、多くの場合難しいと思います。
すばらしい景色を見たければ、もう少し詳細な情報が必要です。
山の天気予報
山の上は平地とは気象状況が違うので、専用の「山の天気予報」を活用する人も多いと思います。
それでも、山の彼方まで晴れ上がった大展望を見るには、単に「晴れ」の予報の日を選ぶだけでは不十分です。
山の天気予報も、無料のものは多くの場合ざっくりとした予報であって、例えば「明日は燕岳から槍ヶ岳が見えるかなぁ」といった状況を、詳しく教えてくれるわけではありません。
たしかに天気は晴れなのですが、山の周辺には雲が湧いていて、山々の大パノラマが見られないということも珍しくありません。
では、景観重視派の登山者は、何を頼りに天候を予想するのか・・・。
山の気象状況を知る
天気予報を元に、これまでの知識と経験から景色の良さそうな日を探ってみましょう。
山は雲ができやすい場所
まずはじめに、「山は雲ができやすい場所」ですが、何故そうなのかを振り返ります。
「雲」というのは小さな水滴の集まりで、簡単に言うと「霧」が高いところにあるといった感じです。
では、空気中に水滴ができるのはどんな時か・・・・
「空気中の水分が凝結して水滴になる仕組み」は中学の理科で学習する内容ですが、忘れてしまうものなので改めて振り返ります。ポイントは以下の2つ。
① 暖まった空気は軽いので上昇する。そして上空へ行くほど大気の温度は低い。
② 空気の温度が下がると、空気中に含みきれなくなった水蒸気が結露して水滴になる。
空気中の水分(水蒸気)は、気温が高いほど多く含むことができるので、夏の空気は基本的に水蒸気を多く含んでいます。
そして「高度が100m上がると温度は0.6℃下がる」と言われていて、山の上はもともと気温が低く、水分が結露して雲ができやすい場所でもあります。
風が山にぶつかると、空気が上へと押し上げられることになり、雲ができるというわけです。
「低気圧」では、上昇気流が生まれて雲が発生しますが、山ではいつも「低気圧」と同じことが起こっているという感じです。
晴れをもたらす天気図は?
山はそのままでも上昇気流が生まれ、雲ができやすい場所なので、「雲ができにくい気象状況」を知る必要があります。
それには、まず天気図で気圧配置を確認します。
「高気圧」が晴天をもたらすのは、高気圧が下降気流を生み、低気圧とは逆に雲を消し去る働きをしているからです。
夏は太平洋の高気圧が日本周辺へ大きく張り出してきて、日本列島を覆い晴天をもたらします。
高気圧も縁の部分は風が発生して天気の変化が起きやすくなるので、確実に晴天であるためには、目的の山域が高気圧の中心付近にすっぽりと覆われている日であることが必要です。
夏山登山では、天気図を見てこうした日を選ぶことが、大展望を楽しむために不可欠な条件です。
これは、一般的な様々な天気予報で簡単に確認することができます。
1日の中でも天気は変わる
「山の天気は変わりやすい」とよく言われますが、山では1日中安定した晴天が続くということは稀で、むしろ時間帯によって天候が変化していくのが普通です。
朝は天気がよくても、太陽が高くなり日照によって地表近くの大気が暖まると、上昇気流が発生し、山では雲が湧いてきます。
天気予報で「大気の状態が不安定」という言葉をよく耳にしますが、上空に冷たい空気が流れ込んでいたりすると、上昇した空気がこの冷たい空気に触れて、急激に雲が発生し激しい雷雨になることもあります。
上空の状況を把握していることは、天気を予測するためにはけっこう重要です。
一般的な天気図は地表近くの様子を表していますが、「高層天気図」という上空の様子を表した天気図もあるので、興味のある方はこうした情報も得て、天気の予測に活用することもできます。
このような訳で、高気圧に覆われ大気が安定していても、日中太陽が高くなると温められた空気が山の斜面に沿って上昇し雲が発生するようになるので、時間帯を選ぶことも重要です。
晴れの日であれば、空気が安定していて風のない「夜明けから朝のうち」が景色を楽しむのに最も適した時間帯といえます。
どんなに天気の良い日でも、太陽が当たれば空気は暖まり上昇気流が生まれ、雲が湧いて山が見えなくなってしまうのが一般的です。
「よい景色が見たければ朝のうち」に行動することがとても重要です。
山小屋情報、ライブカメラの活用
山行の前日や当日なら、近くの山小屋が発信している情報や、ライブカメラの映像などもおおいに参考になります。
どこに雲が湧くかまでは予測できない中、ライブカメラは実際の状況を確認できる強力な情報源です。
ライブカメラで前日の様子などを見ておくと、気象状況の変化が似たような場合が多いので、時間と共に天気がどう変化するのか、などがわかり参考になります。
また、山小屋が発信するレポートからは最新の気象状況を把握できるので、山小屋のブログなどを見て確認しておくことも役に立ちます。
まとめ
ここまでをまとめると
① 目的の山域のある地方が、高気圧の中心近くにすっぽりと覆われている。
② 夜明け前から行動し、朝のうちに稜線に出るようにする。
この2つを満たせば、夏山ではだいたい山並みの絶景を見ることができます。
ネットのアプリでは、「山の天気予報」を提供するものもたくさんあり、特に有料サイトなどでは、かなり精度の高い予報を提供しているので、これらを利用している方も多いと思います。
そうした情報に自らの予想を重ねながら、実際の天気を見ていくことで、自分自身の天気予報の力も上がっていきます。
せっかく山に登るのなら、周囲の山々を見渡す絶景に出会いたいもの。天気を予測する力を高め、絶景の山旅を楽しみたいものです。