定期路線としては、日本に唯一残る寝台夜行特急「サンライズ瀬戸・出雲」。
次々と夜行列車が消えていく中、いつなくなってしまうかわからない寝台列車に乗ってみようと、「サンライズ出雲」に乗車してみました。
今回は、乗車券を確保するのがとても難しいといわれるこの列車の、チケット確保までの体験を紹介します。
夜行寝台列車への憧れ
基本的に、旅は車で出かけることが多いのですが、様々な「乗り物」に乗ってみるのも好きなので、機会があればいろいろなものに乗っています。
鉄道に詳しいわけではありませんが、これまでにも「青春18切符」や各種のお得な「パス」を利用した旅をしていて、列車の旅もけっこう好きです。
今回乗った「夜行寝台列車」というのは、夜通し列車に乗り、走る列車の中で寝るという、非日常感たっぷりの乗り物です。
夜行列車には独特の旅情があり、個室寝台でそんな時間を過ごすのはちょっと魅力的だと思っていました。
かつては東京や大阪から、北海道へ向けて走る豪華な寝台列車がいくつもあったのですが、「北海道新幹線」の開業によって青函トンネルを在来線が走ることがなくなると、これらの列車も姿を消しました。
こうした列車には「食堂車」や「ラウンジ車」もあって、車内ではコースのディナーが提供されたり、青函トンネルの説明会があったりしたそうで、そんな列車に「乗ってみたかったなぁ‥」という思いもあります。
しかし今は、こうした定期で運行されている長距離夜行寝台列車は「サンライズ瀬戸・出雲」のみになってしまいました。
鉄道をよく知る方の話によると、こうした列車は営業的にはあまりメリットがなく、人件費や設備費を考えるとおそらく赤字だろうと言うことでした。
鉄道好きのための列車として存続しているとしたら、この列車もいつ廃止されてしまうかわかりません。今のうちに1回乗っておきたいと思ったのが今回の始まりです。
冬の観光閑散期なら、それなりにチケットをゲットできるのではないか、という甘い考えのもと、乗車券確保に向けて動き始めました。
サンライズエクスプレス
寝台特急サンライズ号には、「瀬戸」と「出雲」の2種類があり、下りの場合、東京駅を夜(21:50)に出発し、翌朝目的地に到着します。(高松7:27、出雲市10:00)
それぞれ7両編成ですが、東京駅を出発するときには連結されていて14両で一緒に走って行き、岡山駅で分離され、それぞれの目的地へ向かいます。
車内の座席の詳細はここでは触れませんが、
・洗面台や机のある広い個室の「A寝台シングルデラックス」
・ベッドが2つ並んだ2人用個室「B寝台サンライズツイン」
・上下2段ベッドの1~2人用個室「B寝台シングルツイン」
・1人用個室の「B寝台シングル」と「B寝台ソロ」
・個室ではないが横になって寝られ、寝台料金が必要ない「ノビノビ座席」
などの様々な座席があります。
またシャワー室や小さなラウンジ、飲料の自動販売機などもあり、車内で快適に過ごせるように作られた日本で唯一残された定期運行寝台車両です。
列車と座席の選択
今回は寝台列車に乗ること自体が目的なので、どうせなら長い距離を乗りたいと思い、「サンライズ出雲」に乗ってみることにしました。
また多様な座席のある列車なので、どの座席に乗るかも迷うところです。
快適なA寝台での旅を経験してみたいと思いましたが、A寝台個室シングルデラックスは各編成に6部屋しかなく、さらに禁煙室はその半分なので、かなり競争率が高いと思われます。
できるだけ確実に確保したいので、今回は「B寝台シングル」を狙うことにしました。
B寝台シングルはけっこう座席数があるので、座席の場所にこだわらなければ、座席の確保はそこまで困難ではないと思われました。
しかし、とりあえず「寝台列車の個室に乗れればよい」というだけではなく、せっかくの寝台列車の旅なので、部屋(座席)の位置も選びたいと思いました。
列車のどの座席かで景色はだいぶ違います。それが12時間の長旅になると、是非とも「座席にはこだわりたい」と思ってしまいます。
サンライズ出雲の座席配置を調べると、B寝台シングルには「1階」と「2階」の席があり、中央の通路を挟んで車両の左右両側に配置されています。
1階か2階かについては、景色を見るためには「2階席一択」です。
列車の左右どちらかについては、下り(東京→出雲)だと進行方向の左側が太平洋に面した側になり、進行方向右側が富士山などの山に面した側になります。
しかし夜行列車なので、翌日の朝までは景色はほとんど見えません。朝になって景色が見えるようになってからを考えると、大山や宍道湖が見える進行方向右側がよいのではないかと考え、進行方向右側の2階席を禁煙車両から選びます。
(ちなみに、A個室、Bツイン、ノビノビ座席などはすべて進行方向の左側に窓があり、座席から右側の景色が見られるのはBシングル、Bソロだけなので、ある意味貴重かもしれません。)
その結果、狙うべき座席を全部で13席ピックアップしました。
その中から候補に決めた座席は、14号車(禁煙車)のB寝台シングル24番(2階席)です。
14号車は最後尾の車両なのですが、座席の予約で発券が自動的に振り分けられた場合、車両番号の早い方から順に埋まっていくのではないかと思い、車両番号が後の方が空きがあって取りやすいかもしれない、と考えて最終車両を選びました。(実際はどうなのかわかりません)
さらに座席の位置は、車両の中央付近が一番揺れが少ないということで中央付近の席を選びましたが、もうひとつ理由があって、日本人には4という数字を避ける人がけっこういるので、競争率が下がるかなという思いもあって、これを第1希望にしました。
座席が決まれば、次はいよいよ購入です。
乗車券購入の方法
さっそく「JRサイバーステーション」で空席情報を調べてみると、発売が開始されたばかりの1ヶ月後の日は、まだB寝台が△になっていて多少の空きはあるようですが、空いているのはどんな座席かはわかりません。
今回いろいろ調べてみたのですが、ネット上からは「どの位置の座席が空いているのかを調べる」ことや、「座席の位置を選んで乗車券を購入すること」はできない、ということがわかりました。
つまり、ネット上でも購入することはできるのですが、どんな位置の座席が割り振られるのかは「発券されてみないとわからない」という状況でした。
サンライズ乗車券購入は「みどりの窓口」がベスト
もともとサンライズ号は1ヶ月前の10時になった瞬間にほとんどの席が埋まってしまうので、ネットでの購入はかなり難しいものです。
しかし実際に「e5489」などで10時01分頃に座席の空席状況を見てみると、喫煙席には多少の空席があり、座席がどこでもよければ、ネットでの購入も十分可能なようでした。
このように、シングルなどは喫煙席が空いていることもあるのでネットでの購入も可能ですが、2階席などを指定したいのなら「10時打ち以外の方法ではできない」という状況でした。
とにかく「乗れればOK」という方は別にして、喫煙をせず車窓からの景色を楽しみたいのであれば、「みどりの窓口」へ足を運ぶしかありません。
「10時打ち」に初めて挑戦
JRで欲しい乗車券をゲットするために「10時打ち」という方法があることを知ってはいましたが、これまでやったことはありませんでした。
やり方をネットで調べたりしましたが、とりあえず「10時打ち」とはどんなものかを体験するために、休日の朝9時40分頃、駅へ行ってみどりの窓口に並んでみました。
「みどりの窓口」には行列ができていて、順番が回ってきたのは10時をちょっと過ぎた10:02頃でした。
窓口の担当者に「1ヶ月後の東京発『サンライズ出雲』のB寝台シングル禁煙席に空席はありますか?」と聞いてみました。
すると即座に予約画面に向き直り、矢のような速さで調べてくれましたが、「すでにすべて埋まっています」との答えでした。
冬の観光閑散期だし、「A寝台はともかくB寝台なら禁煙席も空いているのでは」と思っていましたが、そんな考えはまったく甘いということがよく分かりました。
「10時打ちをお願いすることはできますか」と尋ねると、担当の方はやり方を親切に教えてくれました。
後日、出発日を決め、その1ヶ月前の日の午前9時半頃に、再び「みどりの窓口」に並びました。
「10時打ちをお願いします」と窓口でその旨を申し出て、希望の日時、列車、座席などを伝えると、近くで待機するように促されます。
窓口では10時になるまでは他のお客さんの対応をしていますが、10時が近づくとその業務をストップして再び窓口に呼ばれます。10時が近づくと他にも業務をストップしている窓口があり、順番待ちの列がいっそう延びるので、他のお客さんにはちょっと申し訳ない感じです。
「希望の座席が取れなかった場合、まだ空いている座席を取るということでよいですか?」と聞かれ、最終確認をすると、時報を聞きながら10時ピッタリに購入操作を行ってくれます。
その結果、今回はめでたく希望の座席をゲットすることができました。
担当したのはたまたま2回とも女性の方でしたが、初心者にも丁寧に教えてくださり、テキパキと手続きを進めてくれました。プロフェッショナルなJR職員の皆さんに感謝です。
「10時打ち」については、駅によって対応が違うようなので、実際に近くの駅のみどりの窓口へ行って聞いてみるのがよいと思います。
「サンライズ出雲(B寝台シングル)」を全線乗り通す場合の「東京→出雲市」の運賃は以下の通りです。
乗車券 東京都区内 → 出雲市 12,210円
特急料金 東京 → 出雲市 3,300円
寝台料金 B寝台シングル 7,700円 合計 23,210円
おわりに
「朝10時に駅のみどりの窓口に並ぶ」のは難しい、という方も多いかもしれませんが、サンライズの希望の個室に乗りたいのなら、これが唯一の方法だと思います。(この作業を旅行業者に依頼して代行してもらうという方法もあるようです)
それでも希少な個室に関しては「取れるか取れないかは運次第」で、かなり難しいことは間違いありません。
しかし、初めてこの切符を購入するという方でも、しっかり準備すれば、確保できる可能性はかなり高まると思います。
実際の「サンライズ出雲乗車記」については、後日改めて記事にする予定です。
※この記事の時刻、料金等の情報は、すべて2024年3月時点のものです。