松尾芭蕉の「奥の細道」にも登場する「立石寺」。
通称「山寺」と呼ばれているこの寺は、芭蕉があの有名な句を詠んだ場所としても知られています。
そんな古刹を、ある夏の日に訪ねてみました。
今回は夏の立石寺参詣の様子です。
「山寺」と呼ばれる寺
現代では「花」といえば、花弁を持つ種子植物の生殖器官を表す一般名詞ですが、高校で学んだ古典では、「花」といえば、それは「桜」の花だけを表していました。
「山寺」という名称も、山深くにある寺院全般を表す一般名詞ではあるのですが、一方で、ただ1つの寺だけを表す固有名詞でもあります。
その寺が山形県にある「立石寺」で、一般的に「山寺」と言えば、立石寺のことを表しています。
山寺というべき立地の寺院は全国に数え切れないほどあると思うのですが、その中で唯一この通称で呼ばれることになった「The 山寺」とはどんなお寺なのだろう、と以前から思っていました。
ある夏の東北のドライブの途中で、その「立石寺」を訪ねてみました。
立石寺とは

断崖に建つ伽藍
立石寺は天台宗に属し、創建は貞観二年(860年)、天台座主第3世慈覚大師円仁によって建立されたといわれる東北屈指の古刹です。
山形と仙台を結ぶ峠道の途中にあり、山の麓から山中にかけて境内が広がる「山寺」という呼び名がぴったりの寺院です。
伽藍は崖の上などにも点在しており、それらを巡るためには、千を超える石段を登っていくことになります。
奥の細道
立石寺は、松尾芭蕉の「奥の細道」にも登場します。
奥の細道の旅のルートからは少し外れているのですが、芭蕉が尾花沢滞在中に訪れることを勧められて、わざわざ足を運んだようです。
ここで詠まれたのが、あの有名な一句です。
「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」
有名な観光地となった今の山寺はいつも多くの人々で賑わっていますが、もしかしたら、清閑な空間の中で、芭蕉と同じような想いに浸ることのできる瞬間もあるかもしれません。
山寺を巡る

アプローチと駐車場
立石寺は、山形自動車道の「山形北IC」からは10kmほどの距離です。
駐車場は麓に点在していますが、駐車台数の少ない所が多いです。
最も大きいのが、立谷川沿いにある「山寺駐車場」で収容台数は500台ですが、立石寺までは500mほど歩きます。
人出が多いときは「山寺駐車場」が無難だと思いますが、人出が少なければ、「登山口」や「山寺駅」周辺を探せば、空いている所が見つかると思います。
駐車料金は、だいたいどこも1回500円です。
また、お土産屋さんの駐車場で、1000円ほどの買い物をすれば駐車が無料になるところもあります。
根本中堂から山門へ

登山口の階段を上って境内に入ると、まず初めにあらわれるのが「根本中堂」(重要文化財)です。
根本中堂と言えば、比叡山延暦寺のお堂だと思っていましたが、天台宗のお寺には、いわゆる本堂を「根本中堂」と呼ぶ寺院がいくつかあるようです。
こちらでは、本山の延暦寺から分けられた「不滅の法灯」が、1200年の時を経て灯され続けています。

根本中堂のすぐ脇には「芭蕉句碑」があります。あの有名な一句です。



参道は、出羽国山寺総鎮守という標柱のある「日枝神社」の社殿の前を通って続いていきます。

日枝神社近くには、奥の細道にちなんで「芭蕉像」がたてられています。
この像は、豆菓子の製造販売で有名な「でん六」(山形市)の鈴木伝六氏が寄贈したものだそうで、隣には弟子の曾良像もたっています。

「念仏堂」周辺には、茶屋や土産物店もあります。

「鐘楼」を過ぎると「山門」があらわれ、ここから長い石段の参道が始まります。

千を超える石段を登る

山門から先は入山料が必要で、大人300円です。(8:00~17:00)


奥之院までの石段は、全部で1015段とのこと。
杉木立の中に続く参道を、ゆっくりと登っていきます。



参道の途中には様々な堂塔や遺跡があらわれるので、長い石段ですが飽きることなく登っていけます。


石段登りに疲れてきた頃、「せみ塚」があらわれます。
せみ塚は、芭蕉の句をしたためた短冊を埋め、その上に石の塚をたてたものだそうで、背後には「百丈岩」が迫ってきます。
せみ塚にはベンチもあり、ひと休みできます。



開山堂から奥之院へ

「仁王門」を過ぎると、山寺で最も有名なスポットである「開山堂」や「五大堂」があるエリアにやってきます。

崖の上に立つこれらの伽藍は麓からもよく見えるのですが、ここへ向かう参道から見る姿も「これぞ山寺」といった趣のある光景です。


五大堂は崖の上にせり出す舞台造りの建物で、ここからは境内をはじめ、麓の街並みまで見渡すことができる絶景スポットです。


開山堂を過ぎると、石段の残りもわずかです。
途中にある「三重小塔」は、石の祠の中にある小さな三重の塔ですが、国の重要文化財だそうです。


千を超える石段を登って、「奥之院」までやってきました。
美しい景色を見たり、様々なお堂を巡ったりしながら登ってきたためか、不思議とあまり疲れは感じませんでした。

おわりに

それほど距離があるわけではなく、歩くペースも人それぞれですが、ゆっくり見ながら奥之院まで往復するには、1時間半~2時間程度は見ておいた方が良いと思います。
参道はすべて石の階段なので、どんな靴でも歩くことはできますが、スニーカーなどを履いていくことをおすすめします。
山門から先への入山は、夕方は5時までなので、芭蕉のように夕暮れ迫る時間帯に歩くことはできないようですが、石段の続く参道と、岩山に点在する伽藍の美しい佇まいに触れて、「山寺」と呼ばれていることに納得した参詣でした。

