お城ブームの中で、「天空の城」と言われる山の上の城跡が注目されています。
平地に建つ立派な城の姿も美しいのですが、展望が開ける山上にある城は「行ってみたい」という気持ちにさせてくれる魅力があります。
少し歩かないとたどり着けないため、ウォーキングを楽しみながら健康的に見学や観光ができると思います。
今回は、岐阜県中津川市にある「苗木城」の様子を紹介します。
苗木城とは
「苗木城跡案内ガイド」のパンフレットには以下のように紹介されています。
苗木城跡は中津川市内を東西に流れる木曽川の右岸、一段と高くそびえる山にあります。
木曽川から山頂の天守跡までは、標高差約170メートル。急峻な地形を生かして築かれた山城です。
苗木城の城主は遠山氏。戦乱の時代から明治維新まで苗木領を治めました。
現在は天守跡に展望台が設けられ、恵那山や木曽川をはじめ中津川市街を360度見渡すことができ、美しい景色が見ものです。
昭和56(1981)年に貴重な近世城郭であるとして「国史跡」に指定され、平成29(2017)年には「続日本100名城」に認定されました。
この地域は「恵那峡」など花崗岩の巨石が創り出した景勝地がところどころに見られる地形なのですが、苗木城もそうした岩山の上に築かれた山城です。
明治に至るまで苗木藩主の城として機能しましたが、現在は当時の建造物は残されていません。
苗木藩を治める遠山氏は所領一万石の小さな大名でしたが、この規模としては全国で唯一の城をもつ大名で、明治の廃藩置県まで領主を務めました。
アクセスと駐車場
中央自動車道経由なら
中津川市内の木曽川沿いにあり、中津川ICからも10分ほどとアクセスは大変よいです。
「中津川IC」を下りたら、国道257号線に入り北へ向かいます。木曽川にかかる城山大橋の上まで来ると、川の対岸にそびえる「苗木城」の姿が見えてきます。
案内の標識も各交差点に出ているので、迷うことなく到着できると思います。
駐車場
少し離れたところも含めると広大な無料駐車場が用意されているので、駐められなくて困るということはまずないと思います。
空いていれば、「苗木遠山資料館の駐車場」や「城跡入口のA1駐車場」がよいでしょう。
「苗木さくら公園」から登ると、城跡の中心部までの距離は短いですが、展望がありません。城跡の景観を楽しみながら歩くなら、資料館側からの道がおすすめです。
苗木遠山資料館~三の丸
案内板に従って、国道257号線を右折し苗木城方向へしばらく進むと、「苗木遠山資料館」の前に出ます。
道はさらに上まで続いていますが、今回はこちらに駐車します。(案内図A2)
資料館は月曜日は休館日ですが、「続百名城スタンプ」は入口前に出されていて、利用できるようになっていました。またトイレの利用も可能なようです。
城跡へ登る道はいくつかありますが、こちらがメインルートになります。
緩やかな車道を登っていきます。下の駐車場に駐めて歩いてくる人もけっこういます。
高森神社を過ぎてしばらく行くと車道は終わりになり、歩道の入口に「苗木城跡」の看板が立っています。
ここに最後の駐車場(案内図A1)があるので、歩く時間を少なくしたい人はここまで車で来るとよいと思います。
入口を入ってすぐ「足軽長屋」があります。
ここは、天守のある本丸が見渡せるビューポイントになっています。
「苗木遠山資料館」から「足軽長屋」まで、10分ほどです。
まさに岩山の上に石垣を連ねた要塞のようです。「天空の城」と呼ばれるにふさわしい威容を現しました。
背後に恵那山がそびえ、写真撮影にはもってこいの場所です。
ここから少し下って「三の丸」へ進んでいきます。
道は「二の丸」方面へと二股に分かれますが、石畳の道を進みます。
左に石垣を見ながら緩やかな坂道を登ります。
この道沿いに最後のトイレがあります。また「さくら公園」から登ってくる道が、「大矢倉」の脇を通って合流してきます。
「三の丸」に到着しました。ここは城全体をぐるりと見渡す広場になっています。
「足軽長屋」から「三の丸」までは5分ほどです。
大門~天守展望台
「天守」に向かって登っていきます。入口になる「大門跡」の脇にはこんな巨石がありました。大きさがわかりにくいのでもう一枚。
「大門跡」のすぐ奥にある「御朱印蔵跡」の石垣。隙間なく緻密に組み上げられています。
眼下に「二の丸」を見ながら坂を登っていきます。ここからいくつかの門の跡を通り、折り返しながら登っていきます。
「本丸口門」まで来ました。脇には「千石井戸」があります。
こんな岩山の高所にも井戸があるのですね。
「大矢倉」と「三の丸」を見下ろすとかなりの高度感です。
「武器蔵跡」まで来ると、木曽川の流れが見えてきます。
「玄関口門」を過ぎると、天守展望台は目前です。
展望台のある「天守」に到着しました。三の丸から天守までは10分ほどです。
天守~馬洗岩~大矢倉
展望台からは360度の展望が広がります。木曽川の流れの向こうに恵那山が美しく聳えています。
桜が咲き出していて、城跡の景色に彩りを添えていました。
「天守展望台」はこのような巨石の上に木材を組んで作られています。
柱は岩を削って土台にした上に立てられており、かつて天守が建てられていた時のものをそのまま利用しているそうです。
帰路は「馬洗岩」の方を回ってみます。天守のすぐ下にこのような巨石があります。
この岩に馬を乗せて洗ったという言い伝えは、にわかには信じがたい話です。
木曽川沿いに突き出した「笠置矢倉跡」からは、眼下に木曽川の流れが見渡せます。
天守を見上げると、すぐ横にはこんな巨石がそのままに留まっています。
三の丸に戻り、「大矢倉」も見てみます。
こちらも緻密に美しい石垣が組まれています。
自然の巨石と緻密な石垣が組み合わさった、他にはない独特な城跡だと思います。
苗木さくら公園
車に戻った後、別の登り口になる「さくら公園」を訪れてみました。
まだ咲き始めでしたが、お花見の方々もチラホラ歩いています。
苗木城からの帰り道は、ここへ下りて来るのもよいコースですね。少し登ってみます。
園内には東屋やトイレもあります。
満開の頃には、見事な景色になることでしょう。
C1駐車場まで登ってきました。車道はここまでで、この先は林の中の道です。
「大矢倉跡」までは200mほどです。
おわりに
資料館から天守展望台を往復しても1時間程度なので、ウォーキングとしてはお手軽な距離感で負担なく楽しめます。
苗木城跡は桜の名所でもあるので、その時期には人出が予想されますが、それ以外の季節はのんびりと城跡巡りを楽しめそうです。
少し歩くつもりなら、車を駐車した登り口とは違う道を下り、麓をぐるっと回って戻るのもよいかも知れません。小さな山なのでそれほど時間はかからないでしょう。
周辺に売店等はありませんので、飲料水はあらかじめ持参したほうがよいと思います。
周辺情報
隣の恵那市にも、「日本三大山城」の一つとされる「岩村城跡」があります。
折り重なる石垣の美しい城跡で、こちらから20kmほどの距離なので、1日で両方見ることも十分可能です。