浅間山を間近に望む上信国境の山の上に、ひっそりと佇む小さな湿原があります。
標高2000mの高地ですが、近くまで自家用車で行くことができるため、手軽に高層湿原の姿を楽しむことができる、隠れた自然散策スポットです。
今回は、浅間山麓にある、小さな湿原のハイキングについて紹介します。
池の平湿原とは

「池の平湿原」があるのは、長野と群馬の県境に連なる浅間山系の「三方ヶ峰」で、浅間山からは西へ直線で7kmほどの場所です。
湿原への入り口であるコマクサ峠にある案内板によると、池の平湿原は別名「三方ヶ峰旧火口湿原」というようで、三方ヶ峰火山の旧火口にできた高層湿原だそうです。
標高は2000mほどなのですが、3000m級の高山帯でしか育たない植物がたくさん見られ、周辺にはコマクサの群生地などがあるそうです。
火口原の湿原の周囲は外輪山が取り囲んでいて、稜線上には登山道が整備されており、こちらからの景色は、富士山から南アルプス、八ヶ岳、北アルプス、上越の山々までを望む大絶景が広がっています。
アプローチは「湯の丸高峰林道」の舗装道路を通って湿原の縁にあたるコマクサ峠まで行けますし、外輪山の直径は1kmほどなので、湿原から外輪山を巡っても数時間という手軽さも魅力です。
湯ノ丸林道でコマクサ峠へ

池の平湿原へのアプローチは、湯の丸スキー場のある「地蔵峠」から「湯の丸高峰林道」に入って行くのが一般的です。(地蔵峠から歩いて行く登山道もあります)
林道ですが、地蔵峠から池の平湿原入口の「コマクサ峠」までは舗装された走りやすい道です。

スキー場のある斜面を折り返しながら高度を上げていき、篭ノ登山の麓を進んでいくと、コマクサ峠にある「池の平湿原駐車場」があらわれます。

こちらの駐車場は5月1日から11月3日までは有料で、普通車が1日600円です。トイレはありますが、自販機等はありません。
林道の入り口にクマへの注意を呼び掛ける看板があったので、料金を払う時、駐車場の方に念のためクマについての情報を聞いてみました。
何年か前に出没情報があったけれど、今年は今のところまったくないとのことで一安心です。



池の平インフォメーションセンターの前を通り過ぎ、東屋のある「コマクサ峠」からそれぞれのハイキングルートに入っていきます。
まっすぐ進めば火口原の「湿原」へ。右に進めば外輪山の上を歩く「見晴歩道」になります。

今回は真っ直ぐ進んで、まずは「湿原」を目指します。
湿原への入り口に案内板があり、この地図とインフォメーションセンター前の地図が分かりやすいので、写真の撮っておくと便利です。
緩やかな斜面の広がる峠ですが、ここの標高は2061mあります。

湿原の散策へ

湿原への道は緩やかな下り坂で、整備された木道が歩きやすく、ハイキングスタートのウォーミングアップとしてピッタリという感じです。

遥か彼方に「富士山」も見えていました。


やがて木々の間から、火口原の湿原が見えてきます。


湿原の入り口から木道の分岐まで、およそ10分です。
火口原

木道の分岐には「グリーン広場」という湿原を望む休憩所があり、湿原のほぼ全体を眺められる展望スポットです。
今回は湿原の東側には行きませんでしたが、小さな湿原なので、木道を一回りしても30分もかからないかなという感じでした。


分岐から真っ直ぐ進めば「三方ヶ峰」方面へ、左へ曲がると「放開口」方面への木道が続いています。

湿原の真ん中を通る木道を、真っ直ぐに進んでいきました。

湿原の周囲には、なだらかな外輪山が連なっています。


湿原は乾燥が進んでいるようで、池塘などは見られない草原が広がっています。
秋も深まり、花の姿を観ることはありませんでした。


湿原の南端にある「忠治の隠岩広場」で、木道は放開口方面と三方ヶ峰方面へ分岐します。
国定忠治ゆかりの場所?と思われるのですが、由来の紹介などはどこにもなかったので、関連はよくわかりません。
グリーン広場から忠治の隠岩広場までの時間は、10分もかからないくらいです。


分岐のすぐ近くに「鏡池」があるので行ってみます。


鏡池は湿原の端にある小さな池で、この一帯だけは水分があるようです。
池面に、青空や外輪山が美しく映り込んでいました。
三方ヶ峰

「忠治の隠岩広場」からは、外輪山へと続く緩やかな斜面を登って行きます。


木道が続いていますが、ここからは登山道といった感じになるので、トレッキングシューズなどが必要です。



10月末の高原は朝の冷え込みが厳しくなっており、写真の池は池面が氷に覆われていました。


樹林帯を抜けると、間もなく外輪山の稜線に出ます。忠治の隠岩広場から稜線までは10分ほどです。
こちらの稜線からは、南方向から西方向にかけて遮るものが何もなく、富士山から白馬岳まで続く大展望が広がっていました。








稜線に出て少し上った所が「三方ヶ峰(2040m)」の山頂です。


山頂の西側は砂礫の急斜面になっており、標高2000mほどの山ですが、この一帯は「コマクサの群生地」になっているそうです。
かなりお手軽にコマクサを観ることができる場所だと思います。
見晴岳

ここからは、外輪山の稜線をたどってコマクサ峠へ戻っていきます。いったん三方ヶ峰から下り、見晴岳に向かって登って行きます。

途中に湿原に下りる道の分岐もありますが、稜線通しに進んでいきます。


アップダウンはありますが、全体的になだらかで、気持ちの良い稜線歩きができます。

樹林が途切れると、眼下には湿原が広がっています。

樹林のない岩場の道になると、間もなくもうひとつのコマクサ群生地があらわれます。

寒風が吹き上げてくる荒地の斜面なので、標高が低くてもコマクサが生息しているようです。

稜線の道から少しだけ西へ入ったところに、「見晴岳」のピークがあるので行ってみます。



見晴岳の山頂にはアンテナ塔があり、樹林のない山頂からは、周囲の景色が広がります。

浅間山も頂上付近が少しだけ見え、噴煙が上がっているのも見えました。

見晴岳山頂から西へ続く道を進めば、地蔵峠に下っていきます。

ポコポコと溶岩ドームが連なるその彼方には、四阿山や横手山などが見えていました。

見晴歩道

再び分岐に戻り、「見晴歩道」と呼ばれる稜線の道を進んでいきます。



緩やかな坂を上り、樹林が途切れると、間もなく「雲上の丘(2110m)」です。



ここからは湿原の鏡池などもよく見えます。





ゆるやかなアップダウンを繰り返しながら、「雷の丘」を通り過ぎます。




外輪山の最高地点「村界の丘(2113m)」は、見晴歩道から少し外れた所にあります。


村界の丘からなだらかな坂道を下っていくと、コマクサ峠の東屋の前に戻ってきます。

終わりに

時間的には、火口原の湿原周辺だけなら1時間、外輪山を半周しても2時間程度あれば歩ける手軽な距離感です。体力に自信のない方でもあまり抵抗なく歩けると思います。
今回はまず火口原に下り、その後外輪山の西側を歩いてコマクサ峠に戻るルートで歩きました。
どのように歩くかは個人の好みでよいかと思いますが・・・。
反対周りの最初に外輪山を歩き、その後火口原の湿原に下りるというルートだと、歩き始めから登り坂になり、そして最後のコマクサ峠に戻るときも湿原からの登り坂になります。
個人的には、最初に湿原を歩くのがおすすめです。ただし傾斜は全体的に緩やかなので、あまり気にしなくてよいかとも思います。
小さな湿原ですが、独特の地形やコマクサなどの植物も気軽に楽しめるおすすめのスポットです。
なお、アプローチである「湯の丸高峰林道」は冬季は閉鎖されます。
令和7年の閉鎖期間は、11月16日(日)17:00~令和8年4月25日(土)7:00(開通予定)ですが、閉鎖日や開通日は、降雪や残雪の状況により大きく変わる可能性があるので、東御市観光協会等のHPで確認してからお出かけください。
