長野県最大の古墳で、教科書にも載っている「森将軍塚古墳」。山の尾根上にあるため、周囲を見渡す絶景の古墳です。
現在は復元整備が施されており、建造当時の姿を偲ぶことができます。
古墳までは麓の資料館から徒歩で20分ほどの山歩きになるため、トレッキング気分で訪ねることができ、冬の手軽な山歩きにもなるスポットです。
今回は、晩秋の「森将軍塚古墳」の様子を紹介します。
森将軍塚古墳とは

長野県千曲市にある「森将軍塚古墳」は、全長約100mの長野県最大の古墳で、その「石室」は日本最大級と言われています。(復元された石室の様子は、麓の「森将軍塚古墳館」で見学できます)
長野県の「前方後円墳」としては最も早い時期のもので、東日本でも有数の規模を誇るものです。
森将軍塚古墳は、近くにある「有明山将軍塚古墳」「倉科将軍塚古墳」「土口将軍塚古墳」とあわせて「国の史跡」に指定されていますが、周辺にはその他にも多くの古墳群があり、早くから信濃の中心地として重要な地域であったことが伺われます。
名前の由来は?
名称の「森将軍塚」ですが、「森」は地名であり、「将軍」は偉い人といった意味で、武人が埋葬されているというわけではありません。埋葬者は諸説ありますが、「国造」などのこの地域を治めた人物の墓と推定されています。
ちなみに、古墳の麓の「森」地区は、「杏(あんず)」の生産が日本一の名産地ですので、杏に関連したお土産も購入できます。
復元された前方後円墳
東国ではこれだけの規模の「前方後円墳」は少なく、しかもかなりしっかりと復元されているので、歴史に興味がある人には有名ですが、最近は教科書にも載っているため、むしろ若い人の方が知っているかも知れません。

前方後円墳といえば美しい鍵穴の形が特徴ですが、じつは森将軍塚はちょっと曲がった特殊な形をしています。山の上に造ったため、きれいな左右対称の形とはいかなかったようです。
しかし、ここまできれいに復元された前方後円墳はあまりないので、歴史ファンなら一見の価値があります。
アプローチ
上信越自動車道は森将軍塚古墳のすぐ下を通っており、長野方面から東京方面に向かって走ると、長野道との分岐「更埴ジャンクション」を過ぎてすぐの所で、前方のトンネルのある山の上に、石に覆われた「森将軍塚古墳」の姿が見えています。

「更埴IC」を下りて、その古墳の方向に向かって走れば、どのルートでも10分程度で麓の「長野県立歴史館」と「森将軍塚古墳館」が並ぶ歴史公園の駐車場に到着します。



古墳館と歴史館の間は広場になっていて、古墳に登る年配のグループが集まっていました。


古墳に登るには、古墳館の「バス」を利用することもできます。
午前9時から午後4時の間、希望者があればバスを出してくれます。料金は片道300円、往復500円で、乗車券は古墳館で購入します。
古墳館の休館日と冬期間は運行していませんので注意してください。
※古墳に登る車道はバス専用で、一般車両は入ることはできません。
千曲市森将軍塚古墳館
休館日 月曜日、祝日の翌日、12月29日~1月3日
開館時間 午前9時~午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
観覧料 大学生以上 300円、高校生150円、中学生以下 無料
(バス料金との共通券もあり)
古墳へのミニトレッキング
それでは、山の上の古墳に向かって出発です。


古墳館の裏から山に向かって、バスが走る舗装道路が延びています。最初は車道を歩いて行きます。
登っていくと、上から小学生の集団が下りてきました。社会見学のようです。訪問者の年齢層は幅広いです。

車道と分かれ、山道を進みます。森将軍塚まで600mです。


道は整備されていて歩きやすいです。足元は一面の落ち葉で覆われていて、落ち葉を踏みしめながら登っていきます。

すぐ下を上信越自動車道が走っているため、車の音がけっこううるさかったです。静かな山歩きとはいきませんでした。



尾根が近づくと空が明るく広がってきます。そして尾根上に出ると、尾根の上の方に森将軍塚が見えていました。


そして、ここには「2号墳」があります。円墳で、周辺の陪塚では一番大きいものです。
絶景の森将軍塚古墳



尾根伝いに森将軍塚を目指して登っていきます。
全面に葺石が施された美しい姿が見えてきました。墳丘の上には大型の埴輪が並べられています。


「前方部」にある階段で墳丘の上に登ります。






墳丘上は広く、周囲の展望が開けていて長野方面が見渡せます。眼下には古墳館の建物も見えています。
古墳の主が治めた地域を見渡す場所に造られているのでしょう。
墳丘上の広場の周りにはぐるりと埴輪が置かれ、往時の雰囲気を再現しています。
森将軍塚古墳は前方後円墳としては少し変わった形をしていますが、上から全体を見渡す場所はないので、現地を歩いているだけではその違いを感じることはありません。
しばし景色を楽しんだ後、展望台へ移動します。





展望台は前方部の方から古墳全体を見渡せる場所です。青空に美しい古墳の姿が映えます。ここから見ると、高さが同じくらいのせいか形の整った前方後円墳に見えますね。
ボランティアでガイドをしてくださる方がいて、声を掛けていただきました。希望すれば古墳に関する説明をしてもらえるようです。


バス乗り場への途中にトイレがあります。


展望台から少し下ると「バス乗り場」があります。バスを利用すると、ここまで乗せてきてもらえます。
帰りは、バスの走る車道に沿って下りてみることにしました。道沿いの紅葉が美しく舞い落ちていきます。





ところどころに休憩場所があったり、車道をショートカットする山道があったりして、こちらも散策路としてよいコースです。


車道通しにいくと古墳館へ戻りますが、途中から「科野のムラ」方面の道に行ってみました。
科野の里歴史公園






「科野のムラ」には、古墳時代のムラの様子が復元されています。住居の中に入ることもでき、子どもが興味をもちそうな場所です。


時間があれば、「森将軍塚古墳館」やお隣の「県立歴史館」を見学すると、さらに古墳や歴史について理解を深めることができそうです。

おわりに
季節を問わず、手軽な山歩きと合わせて史跡を巡る旅ができるスポットでした。歴史に興味がある方や、小学生のお子さんがいる家族が歴史の学習に訪れるのにもよい場所です。
徒歩の場合でも、駐車場から古墳へは1時間程度で往復できます。冬の時期も歩くことができ、むしろヘビや虫などの心配がなくよいかもしれません。
なお、冬期間はバスの運行がありませんので、古墳への移動は徒歩のみになります。
歴史公園のすぐ前には、「あんずの里アグリパーク」があり、農産物の購入や食事などができます。またビニールハウスでのいちご狩りやみかん狩りなどを楽しむこともできます。