山頂部の平原に広大な高層湿原が広がる「苗場山」。そこは、雲の上の別世界です。
そんな絶景が見られる苗場山ですが、日帰り登山も可能で、登山の難易度は高くはありません。
今回は、「苗場山」への日帰り登山の様子とルート情報を紹介します。
天上の楽園 苗場山

「苗場山」は、湿原の様子が稲の苗床のようだということでこの名がついたという説があるように、山の上に広々とした湿原地帯が広がっている独特な景観をもつ山で、「日本百名山」の一つにも数えられています。
山頂周辺には平坦な台地が広がりますが、そのまわりの斜面は急傾斜で落ち込んでおり、いわゆるテーブルマウンテンの様相を呈しています。
山頂台地に広がる高層湿原には多数の池塘が点在していて、周囲の山々を見下ろすような草原の中に登山道の木道が続いていく景色は、ここでしか見られない絶景です。
また、山頂には伊米神社、苗場神社などが祀られており、古くからの信仰の山でもありました。
登山ルートの特徴

苗場山にはいくつかの登山ルートがありますが、現在多く登られているのは、新潟県側ではかぐらスキー場から神楽ヶ峰を経由して登る「祓川(はらいがわ )コース」、長野県側では秋山郷から登る「小赤沢コース」です。
関東方面から車で向かう場合、祓川登山口は湯沢ICを下りてかぐらスキー場の登山口まで17km(約30分)ほどですが、小赤沢登山口までは、塩沢石打ICを下りてから50kmほどの細く険しい山道を走らなくてはならず、アプローチにけっこう時間がかかります。
そのため、関東から時短日帰りで行くなら祓川コース、時間はかかっても秘境ドライブと合わせて行くなら小赤沢コースといった感じになると思います。
ルートの様子も対照的で、祓川コースは神楽ヶ峰を越えていく稜線歩きの道ですが、小赤沢コースは山頂の台地に出るまでは樹林の中の斜面をひたすら登っていく道です。
どちらも日帰りが可能ですが、歩行距離の最短ルートは「小赤沢コース」になります。
今回は、登山の負担が最も少ない小赤沢コースの紹介になりますが、秋山郷までのドライブは時間もかかりますし、山道の運転に慣れない人はけっこう疲れると思うので、こちらを選ぶ場合はできれば前泊するのがよいと思います。
秋山郷は秘境ですが温泉地でもあるので、旅館や宿泊施設もありますし、登山口の駐車場(約50台無料)にはトイレも設置されているので、前日に着いて車中泊をして登山することも可能です。
最短ルート 小赤沢コースを登る

小赤沢からのルートにはアップダウンはなく、とにかく山頂台地に出るまでの坂道をひたすら登るという感じです。
山頂台地に出てしまえば傾斜は緩やかになり、あとは景色を楽しみながらの雲上ハイキングという感じになるので、とにかく台地上に出るまでの2時間ちょっとの登りを頑張れば絶景が待っています。


前半は樹林の中の道を登っていきますが、道は木々に覆われて日当たりがよくないので、夏は日差しを遮ってくれて助かりますが、足元はぬかるんでいる部分もあります。

道の途中にはところどころに現在地を示す標識がありますが、樹林の中を通る道の様子はほとんど変わらないので、とにかく坂道を登っていくのみです。

台地の上に出るまで展望はほとんどありませんが、標高が上がると、ところどころ樹林が途切れる所から周囲の山々が見られます。


傾斜が増してきますが、岩と土が混ざる坂道をひたすら登っていきます。後半はところどころに鎖も設置されている急坂です。


樹林が途切れ、周囲が開けてくると、まもなく山頂台地に到着します。
湿原が広がる山頂台地を歩く

山頂台地に出ると広々とした草原が広がり、ここから山頂までは「木道」を歩いて行きます。
小赤沢コースの魅力は距離の短さもありますが、この湿原地帯の木道歩きも登頂ルートの一部である点です。
神楽ヶ峰コースだと、苗場山に登頂後に湿原地帯へと下って来なくてはならないのですが、この景色を見ながら山頂を目指すのも、このルートの魅力です。








湿原の景色を楽しみながら大草原の中を歩きます。緩やかな登りなので、湿原の周辺まで来ると疲れるような場所はありません。
他の登山道への分岐を見ながら途中にある樹林帯を抜けていくと、やがて前方に「苗場山頂ヒュッテ」が見えてきます。


苗場山頂ヒュッテ(自然体験交流センター)は宿泊もできる施設で、飲料水などの補給も可能です。
苗場山山頂(2145m)は、ヒュッテを通り過ぎてすぐの所です。


おわりに

苗場山は、雲の上の絶景と散策を楽しめる美しい山です。
今回は長野県側からの登山の様子ですが、山頂の台地に上がるまでの道のりを頑張れば、その先には絶景が待っています。
特に危険な箇所はないので、前半は大変ですが子ども連れでも登れる道だと思います。
また、小赤沢登山口へのアプローチになる国道405号線は、道幅が狭くカーブの多いいわゆる「酷道」ですので、時間にゆとりをもって走れるような計画をお勧めします。交通安全にも気をつけてお出かけください。