フジファブリックの「若者のすべて」が、高校の音楽の教科書に掲載されることになったと聞きました。
今の高校生が生まれた頃にリリースされた曲なのですが、今も名曲として語り継がれ、広い年代に支持されているといいます。
今回は、この謎多き曲について振り返ってみます。
様々な思いがめぐる
不思議な曲ではあると思います。
2007年の発表からすでに15年の時が経っているのですが、今も高い人気があり、平成の名曲として名が上がる楽曲だといいます。
発表当時、それほどヒットした曲ではないし(オリコンチャート30位)、バンド自体も一定のファン以外にはあまり知られていない存在だったように思います。
穏やかに流れてくるメロディーにのせて、夏の夕暮れの様子が淡々と語られていきます。
花火大会の夜という具体的な場面なのですが、サビからの歌詞には抽象的な言葉が並んでいて、その解釈に戸惑う謎がちりばめられています。
そしてタイトルは、限りなく大きなテーマにも思える「若者のすべて」。
あちこちが心の琴線に引っかかりながらも、どこかとらえ所のない曲という印象でした。
誰にもあった あの時
夏の終わりには、少し感傷的になる時がやってくるもので、そんな日の情景が心に浮かびます。
曲を創りあげている要素は、誰にでも思い当たる節があり、どのようにでも解釈できるようなものばかりで構成されているように思います。
あの、サビの歌詞は何を表しているのでしょう。
♫最後の花火に今年もなったな
何年経っても思い出してしまうな
♪ないかな ないよな きっとね いないよな
会ったら 言えるかな まぶた閉じて浮かべているよ
夏の終わりの忘れ得ぬ思い出になるであろう日に、未来の何かを思い浮かべている一人の若者。
その心の内にあるものは何なのだろう。いつか会うのは誰なのだろう・・・。
やっぱり、どのようにでも解釈できる謎だらけです。
高校で組んだバンドの仲間たちとの最後の夏を終えて、この先それぞれの道に分かれて歩んでいくことになるであろう未来に思いを馳せているようにも思えるし、心を通じ合い共に過ごすその人との、今とこれからへの想いなのかもしれない。
誰の心にも思い当たるものがある歌だからこそ、高校の教科書なのか、と思ったりもします。
そして、こうしたすべてを包み込むように、「若者のすべて」という曲名が付けられているのかもしれません。
若者の想いをのせた楽曲
時を経ても、名曲として今も人気の高い曲はたくさんありますが、この曲も、きっとそのひとつになっていくのでしょう。
シンプルで落ち着いたメロディーラインが、夏の終わりの夕暮れをふんわりと浮かび上がらせるように描いている、どこか懐かしさのある楽曲です。
BUMP OF CHICKENの「天体観測」を初めて聞いた時は、まさに大きな衝撃を受けたのですが、この曲と出会ったときの印象はそこまで強烈なものではなく、じわじわとくる曲なのだと思います。
教科書に載ったとしても、みんなで合唱するような歌い方はしなくていいと思うけれど、高校を卒業した後の人生でも、誰かの心の片隅でそっと響き続ける一曲になっていくのかなぁ、と思います。