3,000m近い高山でも、体力に自信があれば日帰りできる山はたくさんあります。しかし、自分の車を降りて1時間ほどで2,600m峰に立てるのは、全国でもここだけでしょう。
年齢や体力、時間の確保など様々な立場の違いの中で、多くの方が山を楽しむためにアプローチを自家用車で稼ぐドライブ登山。この方法で一度は訪れてみたい登山口が山梨県と長野県の間にある「大弛峠」です。
ここを拠点にして、東には国師ヶ岳、足を伸ばせば甲武信ヶ岳へ。また西には山梨盆地のランドマーク「金峰山」へ、日帰りでの登山が可能です。
今回は、大弛峠から歩行約1時間で2,600mに立てる山行について紹介します。
自家用車で大弛峠へ
「大弛峠」は,自家用車で行くことができる日本最高所の峠です。その標高は2,365m。ちょっとした山より遙かに高いところまで、自家用車で行くことができます。

大弛峠を拠点にした場合、東側の「国師ヶ岳」まではおよそ1時間。その途中で少し足を伸ばせば、周辺の最高峰「北奥千丈岳」2,601mに立つことができます。
また西側には、甲府盆地のランドマーク「金峰山」まで、アップダウンの少ない稜線歩きでおよそ3時間ですので、日帰り登山に適したルートだと思います。
国師ヶ岳について
今回の目的地は「国師ヶ岳」(2,592m )です。山名の由来は、鎌倉~室町時代、甲斐国で活躍した高僧、夢窓疎石(夢窓国師)にちなんだものとのこと。

周辺は森林に覆われていますが、所々花崗岩が露出した明るい山様を見せており、こうした岩稜地帯では周囲の展望が開け、秩父の山々をはじめ、南アルプスや八ヶ岳などを見渡せます。特に富士山は間近に望むことができるため、写真の撮影スポットとしても人気があります。
登山道の途中には「夢の庭園」と呼ばれる一帯があり、空に続くような木の階段が整備されており、この遊歩道から素晴らしい展望を楽しむことができます。

日帰り登山の最大のメリットは、天気を選んで出かけることができる点ですが、このコースも、絶対に天気のよい日を選んで行くべきです。
国師ヶ岳からさらに足を伸ばせば、山梨・埼玉・長野の3県に跨がる「甲武信ヶ岳」(2,475m)まで、約5時間の行程ですが、往復だと10時間ほど見ておく必要があり、同じ道を引き返すのもあまり気が進まない距離なので、甲武信ヶ岳まで行くのであれば、個人的には自家用車利用のドライブ登山ではない方が良いように思います。


大弛峠へのアプローチ
大弛峠へ行くには、まず甲府盆地から、いわゆる「雁坂みち」と言われる国道140号線を、埼玉県秩父方面へと北上して行きます。
「雁坂みち」は古くから武州と甲州を結ぶ交通路として利用されてきましたが、たいへん山深いため、自動車で通行できるようになったのは平成10年になってからのことです。
峠の下に「雁坂トンネル」という全長6,625mの長大なトンネルが建設されるまでは「開かずの国道」と呼ばれ、自動車の通れない国道とされていました。
峠の秩父側には、パワースポットとして有名な三峯神社などの見所もありますが、ドライブ好きなら、この長い一直線のトンネルを通るだけでも行ってみる価値があります。
話が逸れましたが、大弛峠に向かうには、雁坂みちの途中で左方向へ「クリスタルライン」に入って行きます。
その先はカーブの多い山道ですが道なりに進み、琴川ダム湖で左折するクリスタルラインと別れて「林道川上牧丘線」を直進します。
長い登り坂に飽きてきた頃、金峰山の五丈岩が見えてくると峠は近いです。峠の近くでは、道沿いに路上駐車の車が列をなしているのですぐにわかります。
大弛峠を出発
この山行で最大の難関となるのが、大弛峠で駐車場を確保することです。まだ暗いうちでないと、駐車場を確保することはほぼできないと思っていた方が無難です。
その場合には路上駐車をするしかないのですが、山梨県側の舗装道路には、各所に駐車禁止帯の表示がありますので、そこはしっかり避けなければなりません。
すでにたくさんの車も駐まっているでしょうから、駐車場所を確保するには峠から数百メートルは下る覚悟でいた方がよいと思います。(四駆以外の車で長野県側に入るのはおすすめしません)


準備を整えたら、駐車場でトイレを済ませて出発です。周辺にトイレはここにしかありません。AM8:43



案内板から右方向へ進むと、すぐに「大弛小屋」があります。AM8:47

登山道はよく整備されていて、木道が設置されている部分もあります。AM8:52

樹林の中の道を進むと、夢の庭園の案内板が現れます。AM8:56

大きな岩が散在し、その上に設置された木の階段を進んでいきます。AM8:57

やがて樹林帯を抜け、周囲の展望が開けます。ここまで峠からおよそ15分です。AM8:58

急な階段を進むと、足元に大弛峠の駐車場が見えてきました。

夢の庭園
ここまではよく整備された道で、登山をしないドライバーが散策にやって来る場所でもあります。
「夢の庭園」はこの一帯に名付けられた名称で、特定の場所やピークがあるわけではありません。道を歩きながら周辺の展望と花々を楽しみます。

ここから上は本格的な登山道になり、しっかり高度を稼いでいくことになります。およそ25分の登りで「前国師岳」に到着します。AM9:30

国師ヶ岳(2,592m)、そして 2,601m の北奥千丈岳へ
前国師岳から先の道はこれまでより平坦になり、5分ほど行くと「北奥千丈岳」への分岐点があらわれます。このあたりの最高峰は「北奥千丈岳」ですが、まずは「国師ヶ岳」をめざします。AM9:38



国師ヶ岳山頂に到着。景色を楽しみながらゆっくり歩きましたが、ほぼ1時間の行程でした。AM9:46

写真右側に四角い「標石」がありますが、ここは一等三角点です。南側を広く見渡すことができます。広い山頂では多くの登山者が休憩していました。
しばし休憩を取り、次の目的地、北奥千丈岳に向けて出発です。AM10:15

樹林帯を抜け、岩の道を進むようになると頂上はもうすぐです。
遠くは雲の中で、南アルプスや八ヶ岳を見ることはできませんでしたが、金峰山など周囲の山々が見渡せます。


北奥千丈岳山頂に到着。AM10:27
山頂は岩の露出した見晴らしの良い場所でした。金峰山の五丈岩がよく見えます。


北奥千丈岳の標高は2,601m。北アルプスで言うと蝶ヶ岳(2,677m)や爺ヶ岳(2,670m)なども2,600m台ですので、歩行約1時間でこの高さまで来ることができるドライブ登山の威力を改めて感じます。
景色を堪能して下山を開始します。AM10:40
雲が切れて富士山が見えてきました。この標高でこの近さから富士山を見られる場所は他にないので、新鮮に感じます。



AM11:25 峠に帰還。
おわりに
山歩きを始めて間もない方、子ども連れで長い歩行は避けたい方、体力が気になりあまり高山への登山経験のない方など、多くの方におすすめできるコースですが、問題は大弛峠での駐車です。
普通に行動していたら、駐車場にはまず駐められませんので、それに対する対応をあらかじめ考えておいてから訪れることをおすすめします。


