全国に残る森林鉄道の中でも、知名度の高い木曽の「赤沢森林鉄道」。長野県木曽郡上松町にある「赤沢自然休養林」の中を走るレトロなトロッコ列車で、現在も実際に乗車することができる数少ない路線です。
「赤沢自然休養林」は日本三大美林の一つで、樹齢300年以上の木曽ヒノキが立ち並ぶ美しい森林地帯です。
赤沢森林鉄道の路線はすべて森林の中を走っているため、まさに森林浴列車という感じで、また周辺には遊歩道が整備されていて、林間のハイキングを楽しむこともできます。
今回は、秋の「赤沢森林鉄道」の様子について紹介します。
アプローチ

木曽周辺には高速道路が通っていませんので、自家用車の場合は、中央道の「塩尻IC」あるいは「中津川IC」から「国道19号線」に入り、「上松町」をめざします。どちらから行っても、距離はあまり変わりません。
上松周辺には、あちこちに「赤沢自然休養林」への案内板が出ています。西方向へ谷に沿って「県道473号線上松御岳線」をさかのぼります。
途中にある分岐で「赤沢自然休養林」方面へ進みます。各分岐に案内板があるので、迷うことはありません。道の終点が「赤沢自然休養林」です。
森の中に、広い駐車場があります。ここまで国道19号線から約15km、30分ほどです。
赤沢森林鉄道

「赤沢自然休養林」は、古くから良材の産地として知られ、江戸時代は尾張藩の直轄地であり、明治以降は国有林となりました。
そして、木曽地域で林業が盛んだった時代に、木材の運搬や住民の足として利用されてきたのが「赤沢森林鉄道」です。全国の森林鉄道のうち、国内で最後まで現役で運行された森林鉄道でもあります。
軌道の幅は762mmで、JRの線路より狭く「狭軌、ナローゲージ」と呼ばれるものです。
木材の輸送手段が鉄道からトラックへと移行する中、赤沢森林鉄道も1975年に運行を終えました。
しかし、1985年の伊勢神宮御用材伐採の際、この森林鉄道の様子が全国に放送されて評判になり、1987年に運行を再開しました。
現在の走行区間は1.1kmと短いですが、当時の雰囲気を十分味わうことができます。
【赤沢森林鉄道】
距離:往復2.2km 1便当たり5両・定員100名
料金:大人(中学生以上)900円、4歳~小学校 600円

各種パンフレットのダウンロードは、こちらからどうぞ。
森林鉄道に乗車

駐車場から森林鉄道乗場へ向かいます。駐車場から、赤沢森林交流センターなどいくつかの建物の前を通って数分で到着します。周辺には土産店などもあり、通り道にある「せせらぎの里赤沢」では食事をとることもできます。
森林鉄道乗場の建物には、「森林鉄道記念館」が併設されています。また野外には、蒸気機関車などの車両も展示されていました。

乗車券を購入し、板張りのホームに上がります。乗車券はヒノキの板でできたもので、記念に持ち帰ることができます。列車がやってきていよいよ乗車です。


列車はゆっくりゆっくり走っていきます。引っ張っているのは蒸気機関車ではなく、小さなかわいいディーゼル機関車です。



列車は小川に沿って、林の中を進んでいきます。線路沿いには遊歩道が整備されており、歩いている人たちもたくさんいます。


車両は側面がオープンになっていて見晴らしが良く、森の空気を直に感じることができます。


森林鉄道は「丸山渡停車場」が終点で、ここで折り返し運転になります。ここまで1.1km、10分ほどの乗車でした。



先頭のディーゼル機関車が、今度は山麓駅に向けて牽引するために、列車の最後尾に移動してきました。この連結作業の様子も、間近で見ることができます。


そして、帰路の乗客を乗せて、列車は山麓の乗場へ向けて走り去って行きました。



丸山渡停車場付近には、古い線路や車両が残されていて、自由に見学することができます。
自然休養林遊歩道を歩く

しばらく森林鉄道の遺構を見学した後、帰路は「遊歩道」を歩いて帰ります。
自然休養林の中には、いくつかの散策コースが設置されており、今回は線路沿いを駐車場へ戻っていく「ふれあいの道」を歩きます。


このコースは、なだらかに下っていくほぼ平坦な道で、年配者や子どもにも優しいコースです。秋は紅葉が美しく色づいています。







遊歩道のあちこちで、走って行く列車を間近に見ることができます。写真を撮る人たちもたくさんいました。




遊歩道は車いすでの通行にも対応しており、秋は美しく色づいた林の中を歩く気持ちの良い道です。
遊歩道は川の対岸へ移り、森林鉄道の駅には戻らず、駐車場の方へ進んでいきます。


「森林教室広場」に到着し、目の前の橋を渡れば駐車場です。
「ふれあいの道」は距離1.4km、見学したり写真を撮ったりしながらゆっくり歩いても1時間ほどです。
自然休養林らしい、気持ちの良い林間の道でした。時間と体力があるなら、帰路はぜひ歩くことをおすすめします。
寝覚ノ床

森林鉄道からの帰り道、木曽川沿いに戻り、近くにある「寝覚ノ床」を訪ねました。



巨石が織りなす奇観が美しい木曽の名所で、国道19号線沿いから簡単に立ち寄ることができます。ここに浦島太郎伝説が残るというのがちょっと不思議でした。
周辺観光地の情報は、こちらからどうぞ。