保福寺峠を走った後、近くにある「四賀キャニオン」という景勝地を訪ねてみました。
松本市北部にある、地図にも載っていない場所です。
今回は、グランドキャニオンに似ているということで名づけられたという、巨大な露頭についてのレポートです。
善光寺西街道をゆく
「保福寺峠」を走り、松本市四賀へ下った後、近くに「四賀キャニオン」という景勝地があるというので訪ねてみました。
まずは、いわゆる「善光寺西街道」に入り、北上していきます。
江戸時代、信州には「中山道」から分かれて北へ向かう主な街道が2つあったのですが、ひとつは「追分宿」(現御代田町)から分かれて北へ向かう「北国街道」、もうひとつは洗馬宿(現塩尻市)から分かれて北へ向かう「北国西脇往還」で、これらは善光寺への参拝者が多く通ったことから、「善光寺街道」とも呼ばれています。
そして2つを区別するために、洗馬から長野へ向かう北国西脇往還は、「善光寺西街道」と呼ばれることが多いです。
かつての江戸の人々は、上方見物やお伊勢参りをする際は、行きは東海道、帰りは中山道を通り、洗馬宿からこの善光寺西街道に入り、善光寺へ詣でてから江戸へ帰ることが多かったそうです。
古い街道の雰囲気が残る「会田宿」を過ぎ、「立峠」へ向かってまっすぐに伸びる旧街道を上っていきます。
沿道にはかつての「常夜灯」や、古い建物なども残されています。
山間に入ってくると、道は駐車場になっている広場に出ます。ここは沿道にある「岩井堂」の駐車場のようでした。
こちらに車を止めて、「岩井堂」へと登っていきました。
なお、この駐車場の先にも善光寺街道は続いていて、道は細くなり舗装も荒れていますが、旧街道に沿いながら「西条宿」まで行くことができます。
また、沿道の案内には「四賀キャニオン」という名称はいっさい出てこないので、とりあえず「岩井堂」を目指して行ってください。
岩井堂観音堂
「岩井堂」は、善光寺街道のすぐ脇の斜面の上にあるお堂で、弘法大師伝説のある古くからの霊場とのことです。
そして、善光寺街道筋の信濃三十三番中二十番目札所で、善光寺参りの旅人が多く参拝したそうです。
観音堂周辺の岩山には「石仏」が点在しており、このあたりでは珍しい磨崖仏もあるそうで、これらは市の重要文化財に指定されています。
岩井堂の砂岩層
「岩井堂」へ向かうつづら折りの道を登ると、数分でお堂が見えてきます。
お堂が見えた所で道は二つに分かれますが、ここを岩井堂とは反対の方向の道を進みます。
この道にも、「四賀キャニオン」に関する案内はまったくないので、勘で進みます。
しばらく行くと鎖の柵があらわれ、さらに崖に沿って道を進んでいくと、巨大な露頭「四賀キャニオン」が姿をあらわします。
いわゆる「四賀キャニオン」とは、松本市会田にある「岩井堂の砂岩層」のことで、独特な雰囲気がグランドキャニオンを思わせることから名づけられた愛称です。
正式なものではないので地図に載っているわけではないのですが、グーグルマップではしっかりと表示してくれました。
バンドに沿ってさらに露頭の奥へ進めそうでしたが、柵はここまでです。
ここはおよそ700万年前の砂岩層の巨大な露頭で、浅い海にできた地層には様々な生物の化石や自然現象の痕跡などを見ることができます。
その中には石炭層もあり、かつてこの近くには石炭鉱山もありました。
明治12年に、紀州の金森信一郎が善光寺参りをした際、その帰り道に岩井堂観音山に露出する石炭層を発見しました。
採掘権を得て明治16年に開鉱し、ここで産出する石炭が、諏訪・岡谷地方の養蚕業を支えたといわれています。
「日本のグランドキャニオン」というには規模が小さいですが、地層の重なりなどにはその雰囲気があります。
「四賀キャニオン」は、壮大な地層を見ることができる隠れた景勝地でした。駐車場から露頭まで徒歩5分ほどなので、ツーリングの途中でも短時間で見学できます。
いったん岩井堂に戻り、さらに露頭の上部へ登ってみました。
周辺の巨岩には、仏が彫られていたり、修行した場所なのかと思う岩屋があったりして、ちょっと冒険気分で散策できます。
見晴らしのよい岩山の上には、煮炊きをした跡があり、近くには小さな小屋も建っていました。
この景色の中で、バーベキューを楽しむ地元の方がいるのでしょう。
展望の開ける場所もあり、近くの「虚空蔵山」や会田の里も見渡せる眺めの良い場所でした。
ただし、下は急傾斜の崖で柵などもないので、滑落等には注意してください。
林道虚空蔵線
四賀キャニオンを見た後は、この周辺の林道を走ってみようと思い地図を調べると、先ほど見えた「虚空蔵山」を越えていく道があるので、そこへ向かいました。
虚空蔵山の麓を行くと、「信州グリーンローズスタジアム四賀」という野球場があらわれました。
こんな山の中にまだ新しい立派なスタジアムがあることに驚きましたが、女子野球の普及に力を入れているとのことでした。
この球場のすぐ上に「林道虚空蔵線」の入り口があります。
「林道虚空蔵線」は、虚空蔵山の中腹を東西に走るまだ新しい林道のようで、全線舗装されていました。
途中に落石が転がっていたり、路肩が崩れていたりしましたが、舗装面はきれいで、道幅もあり走りやすかったです。
ただ展望はほとんどありませんでした。
途中には2ケ所、虚空蔵山への登山口がありました。
林道を抜ける手前にゲートがあり、閉まっていたので焦りましたが、施錠はされておらず、自分で開閉して通ることができました。
ゲートを過ぎると、間もなく「県道303号線(会田西条停線)」に合流します。
県道を北へ進むと、そのまま長野自動車道「筑北スマートIC」入口に突き当たります。
この近くを走ったら、「四賀キャニオン」に立ち寄ってみるのもおすすめです。