日本三大渓谷の一つに数えられる「清津峡」。その渓谷美もさることながら、近年は見学のためのトンネルがアート作品として整備されたことから、新たな魅力をもった観光スポットとして注目されています。
まだそれほど知名度も高くない「清津峡」ですが、関東からも日帰りで訪れることができ、周辺の観光地とあわせて巡ると魅力的なドライブコースになります。
今回は、「清津峡」と幻想的な景観が広がる「渓谷トンネル」の様子について紹介します。
清津峡とは
黒部峡谷、大杉谷とともに日本三大峡谷の一つに数えられている「清津峡」は、昭和16年4月に国の名勝・天然記念物に指定され、昭和24年9月には上信越高原国立公園にも指定された、荘厳な閃緑ひん岩と柱状節理の美しい渓谷です。
清津川を挟んで切り立つ巨大な岸壁がV字型の大峡谷をつくり、雄大な柱状節理の岩肌とエメラルドグリーンの清流が、訪れる人々に深い感動を与えます。
観賞用として「清津峡渓谷トンネル」があり、~~大地の芸術祭のアート作品のひとつ、マ・ヤンソン/MADアーキテクツの「Tunnel of Light」が広がります。~~
トンネルの中にある4つの見晴所から雄大な峡谷美を堪能できます。
アプローチ
関越自動車道の「塩沢石打IC」を下り、国道17号線を横切って国道353号線に入り、十日町方面へ向かいます。
山を登り峠のトンネルを抜けると、「魚沼スカイライン」への分岐があり、その先は長い下り坂になります。
左手に集落が見えてくると、清津峡への分岐の案内板があらわれます。
案内に従って進むと、所々に臨時駐車場があらわれますが、第1駐車場をめざしてさらに進みます。
途中で渋滞が始まりました。Uターンして戻っていく車や、手前の駐車場に駐めて歩いていく人たちもいます。
第2駐車場手前の渋滞の列に並びます。
失礼ながら、それほど有名な観光地ではないと思っていたので、紅葉の時期にもまだ早い平日に、ここまでの人出があるとは予想していませんでした。駐車場のキャパが小さいということもあるとは思いますが・・・。
第2駐車場の入口に係の人がいて、第1駐車場から帰る車が1台出てくると、1台が入っていく形になります。しかし第2駐車場に空きがあったので、こちらでもよいと伝えると、すぐに第2駐車場に入ることができました。
第2駐車場に駐めて、歩いて清津峡へ向かいます。歩いている人もけっこういます。
第1駐車場までは歩いても5分ほどの距離なので、第1駐車場の空きを待つよりも早かったかもしれません。
こちらでトイレに寄っていきます。エントランスやトンネル内にもトイレはありますが、こちらで済ませていきましょう。
清津峡の散策へ
清津峡の旅館街の中を進んでいきます。
旅館街を抜けると、谷沿いの遊歩道が始まります。入口に案内板があり、注意事項などが掲示されています。
エントランス施設 ペリスコープ(潜望鏡) (木)
遊歩道に入ると、三角屋根の建物が見えてきます。ここからMADアーキテクツの設計によるトンネルアートが始まります。
この建物は「清津峡エントランス」と呼ばれ、これも木をモチーフにしたアート作品のひとつです。以下は公式ホームページにある説明です。
“ペリスコープ(潜望鏡)” (木)
トンネルへのアプローチに、小さな木の「小屋」が建っている。
1階はカフェとお土産店(地元の工芸品もある)。2階の杉の傾斜した屋根の内部には足湯がある。
天井にあいた円状の開口部―ペリスコープ(潜望鏡)が屋根に向って開かれている。周囲の景色を映す鏡状のレンズに囲まれ、来訪者は、足湯につかり、くつろぎながら、木の室内の温かさに包まれ、つかのま、屋外の自然の風景を楽しむ機会を与えられる。
清津峡エントランス
営業時間 9:00~16:00
1階 お土産、カフェ
2階 足湯 無料
トイレ 女性用①、多目的トイレ①
ここを過ぎると、いよいよトンネルの入口です。
清津峡渓谷トンネル
トンネル入口にも、新型コロナウイルスに関する対応について掲示板が出ていました。
受付で利用料を払いトンネルに入ります。入口周辺にはパンフレットや記念のスタンプが置かれ、車いすも用意されていました。
トンネル利用料
大人(高校生以上) 800円
子供(小・中学生) 400円
未就学児 無料
- ※障がい者手帳所持者は無料(手帳かコピーをご提示下さい)
- ※団体(20人以上)のご利用で入坑料金からお一人につき50円引き
トンネル受付時間
8:30~16:30(閉抗時間 17:00)
※第2見晴所に作品を兼ねたトイレが2つあります。
トンネルの距離は往復で約1.5km。ゆっくり見て回っても1時間程度で往復できます。
以下は、ホームページにあるトンネル内のアート作品の説明です。
マ・ヤンソン/MADアーキテクツ「Tunnel of Light」とは?
2018年には、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」の作品として、中国の建築事務所・MADアーキテクツの設計によりトンネル全体をリニューアル。
トンネル内部と新たに設置したエントランス施設のいくつかのポイントに、自然の「5大要素」(木、土、金属、火、水)をモチーフにした建築的な空間とアーティスティックな雰囲気がつくりだされ、トンネル全体が生まれ変わりました。
MADアーキテクツは、人間と自然の関係をあらためて考え、地元の人々、来訪者双方を土地の圧倒的な美しさに再びつなげることを企図したのです。
“色の表出” (土)
トンネルの入口はかつての栄華を取り戻し、新しく改修された通路へとつながっていく。
異なる色の光をトンネルの見晴所毎に展開させた。空間の活気を〝色の表出″としてとらえ、ミステリアスな音楽と組み合わせることで、微細だがダイナミックな環境をつくりだし、トンネルを歩く人たちに未知なるものへの好奇心をかきたてる。
“見えない泡” (金属)
第2見晴所の改修では、"見えない泡"が施された。
異世界から降りてきたような、カプセル状の構造がトンネルのシルエットを柔らかに映し出し、周囲の風景を反射する。
トイレの峡谷に向った壁は透明である。外の窓はメタル上のフィルムで覆われているので、内部からしか見えないようになっており、パブリックとプライベートの観念の遊びを試みている。
そこは、静かな逃避所、孤独な場所、パブリックな場にいながら、親密な場所でもあるのだ。誰も自分たちのことを見ていないと思っている時に、人はどう反応するのか――そんなことを考えながら、沈思黙考できる理想的な一角である。
“しずく” (火)
‘露のしずく’が第3見晴所の湾曲した壁に散りばめられた。
“しずく”は、不確かな窓のように、反射する開口部の連なりである。
自然環境を映しこみながら、現実を投射し、また、水の分子のように超現実的に見える泡が、天井や壁から宙に落ち、時間のなかで凍結する。
火のような赤いバックライトで照らされた凸面鏡を覗き込むと、 自然とのもうひとつのつながり――ミステリアスでありながら、あたたかな――を体験することができる。
“ライトケーブ(光の洞窟)” (水)
今回の改修の頂点は、"ライトケーブ″で表現される。
半鏡面仕上げのステンレススチールがトンネルをなぞり、傑出した岩の形、目に鮮やかな緑、秘蔵の大地から湧き出る青緑色の水を、閉じられた空間に引き込む。
浅いプールの水はそよ風に柔らかな波紋を描く。洞窟に映し出される峡谷のイメージは水の上にも投射され、自然の無限のイリュージョン(幻影)が生み出される。
“ライトケーブ”は、軽さと静謐さの両方を、暗く湿っぽかったトンネルにもたらし、思いもよらぬ方法で、訪れた人々を自然のなかにたたずませることを可能にした。
渓谷トンネルの散策
以前は普通のトンネル通路でしたが、現在のトンネル内部には様々な演出が施されています。それらを見ながら辿っていきます。
トンネル通路(色の表出)
トンネル内は、部分によって灯りの色が変わっていきます。入口近くは緑色です。
ところどころに、清津峡やトンネルについての説明展示があります。清津峡の立体模型もありました。
第一見晴所
第1見晴所に到着です。トンネルに横穴があいており、その開口部から渓谷の景観を眺めることができます。
見晴所からは、切り立った急峻な渓谷の様子が見られます。目の前に柱状節理の岸壁が広がっています。
第二見晴所(見えない泡)
第二見晴所には表面がミラーの円形の物体が置かれていますが、これはトイレでもあります。
第三見晴所(しずく)
第3見晴所は、トンネルの内部に円形のミラーが水玉模様のように付けられていて、赤い間接照明と相まって幻想的な雰囲気を醸し出しています。
開口部の向こうには、柱状節理の岩壁が迫ります。
パノラマステーション(ライトケープ(光の洞窟))
いよいよ最深部の「パノラマステーション」に到着です。一番の人気スポットなので、ソーシャルディスタンスの確保を呼びかける掲示が出ていました。
トンネルの開口部から見える岩壁、差し込む光に輝く水鏡、そしてそこに佇むシルエットを撮影するのが人気の清津峡最大の注目スポットです。
水鏡に入るのは自由で、多くの人が靴を脱いで奥に進み、思い思いのポーズで写真を撮っていました。
この日は風があり、水面は鏡のようではなく美しい波模様ができていました。
歩いて行けるのはトンネルの端の部分だけで、真ん中は深いです。
一組ずつの撮影とはいきませんが、それとなく皆さんがよいポジションを交代しながら撮影していました。
帰路へ
同じルートを辿って、入口に戻ってきました。
遊歩道入口のテントでは、地元の方が今年の新米を販売していました。魚沼産コシヒカリです。
お土産屋さんののれんには、笹だんご、とちの実せんべいの文字が。
帰りも第1駐車場は相変わらず満車です。第2駐車場には空きがありました。
おわりに
「清津峡」はそれほど有名な観光地ではありませんが、高速道路のインターから近く見学も1時間ほどででき、自然を感じると共に印象的で「映える」写真も撮れるスポットです。
今回は秋の紅葉が始まる前の平日の訪問で、多少の渋滞はありましたが、さほど待つことなく駐車することができ、渓谷の自然も満喫できました。
休日や紅葉の時期はけっこう混雑するようですが、それを避ければソーシャルディスタンスを保って自然の造形美や幻想的なアートを楽しめるおすすめのスポットです。