京都の東に聳える比叡の山々。
比叡山には、京都と滋賀の両側から、延暦寺へ向かうケーブルカーやロープウェイが設置されています。
今回はこれらを乗り継いで、京都から琵琶湖まで比叡山を横断するハイキングに出かけてみました。
比叡山を横断する
「比叡山」は京都と滋賀の間に聳える山地の総称で、「延暦寺」があることで知られています。
現在の比叡山は、延暦寺への参拝のためのケーブルカーやロープウェイが京都側、滋賀側それぞれから設置されており、気軽に訪れることができます。
これらの乗り物を楽しみながら、比叡山を越えてみるのも手軽なハイキングになるのではないかと思い、京都から滋賀へ比叡山を横断してみました。
ルートは、「叡山電車」で「出町柳」から「八瀬比叡山口」へ行き、「叡山ケーブル」と「叡山ロープウェイ」を乗り継いで「延暦寺」へ。
そこから「坂本ケーブル」で滋賀側に下り、「坂本比叡山口」から「京阪電車」で京都へ戻ります。
最後は、「蹴上」から琵琶湖疏水に沿って「南禅寺」へ出て、「哲学の道」を歩いて帰ってきました。
叡山ケーブル・ロープウェイ
叡山電車の「出町柳駅」から乗車し、比叡山への入口である「八瀬比叡山口」へ向かいます。
「叡山電車」は、京都市北部の地域の足であるとともに、比叡山や鞍馬方面への観光路線ということもあり、近年ユニークなデザインの車両を導入したり、鞍馬線沿線の紅葉のライトアップなどで話題になっています。
叡山本線終点の「八瀬比叡山口駅」で下車し、高野川の対岸にある「ケーブル八瀬駅」へ300mほど歩いて移動します。
ケーブル駅の先には、まだ紅葉が残る「もみじの小径」があったので、少し歩いてみました。
今年は冬の訪れが遅く、初冬の京都にはまだあちこちに紅葉が残っていました。
ケーブル駅に戻り、「叡山ケーブル」に乗車して山頂を目指します。
終点の「ケーブル比叡駅」までの所要時間は約9分。冬期間は30分間隔で運行しています。
それほど展望のある路線ではありませんが、朝の比叡山には霧がかかっていて、周囲の展望はまったくありません。すれ違ったケーブルカーも霧の中に消えていきました。
ケーブル終点の駅を出ると、目の前にロープウェイの比叡駅があります。
ケーブルの終点まで登ると雲の上に出て、頭上には青空が広がってきました。
ロープ比叡駅の「かわらけ投げ」の場所からは、京都盆地に雲海が広がっているのが見えました。
続いてロープウェイに乗車し、さらに上へと登ります。
「比叡ロープウェイ」の所要時間は約3分。こちらも30分間隔で運行しています。
「比叡山頂駅」のある山頂エリアからも、眼下には一面の雲海が広がり、京都の街はまったく見えませんでした。
次第に雲が消えるのを期待しながら、「比叡山越え」に向けて歩き始めます。
電波塔の脇を通って、バス停へ向かう舗装された道を歩いて行きます。
比叡山は山のあちこちに「延暦寺」の伽藍が広がっているので、観光客はバスに乗って、山頂エリアにあるいくつかのお堂を巡ることが多いです。
しかし、今回は寺院が目的地ではないのでバス停方面へは行きませんが、しばらく同じ道を進みます。
ところどころに案内板があるので、確認しながら歩いて行きます。
途中で道が2つに分かれますが、右の舗装道を進んでいくとバス停へ行きます。
「延暦寺(根本中堂)」へ向かう場合は、左側の山道へ入っていきます。
同じロープウェイに乗ってきた乗客の皆さんは、けっこうたくさんの方がこちらのルートへ進んで行きました。
杉林の山道をしばらく下っていくと、展望の広がる「見晴らし広場」に出ます。
この日はまだ雲海が広がっていましたが、比良や鞍馬など周囲の山々が見渡せました。
ここは「京都一周トレイル」が通っている場所で、ここからしばらくはこのトレイルに沿って歩きます。
延暦寺方面へ向かって歩いて行きます。
しばらく行くと「鎮護国家」の碑があり、ここから延暦寺の寺域に入るようです。
また、この辺りが京都と滋賀の県境になります。
延暦寺
道を下っていくと、「奥比叡ドライブウェイ」が見えてきて、その向こうの林の中に、弁慶も修行したと伝わる「山王院堂」が静かに佇んでいます。
「山王院堂」から北へ進む「京都一周トレイル」から分かれ、「延暦寺」に入っていきます。
延暦寺を通らずに東側に抜ける道はないようなので、ここで巡拝券(1000円)を購入して境内を通っていきます。
阿弥陀堂と東塔の間を通って、境内に入ります。
延暦寺は、比叡山の山中にいくつもの地区に分かれて広がっているのですが、ここはその中でも「東塔」と呼ばれる地区になります。
世界文化遺産にも登録されている「延暦寺」の創建は788年(延暦7年)。伝教大師「最澄」によって開かれた我が国で最も有名な寺院の1つです。
数多くの宗派の教祖たちが学んだ日本仏教の総本山とも言えるような寺院ですが、織田信長による焼き討ちで知られるように、戦乱等による消失などで創建時の建造物は残されておらず、伽藍の建物は比較的新しいものです。
延暦寺の総本堂である「根本中堂」は、1642年に徳川家光によって再建された国宝建造物ですが、現在約10年におよぶ大改修の途中で、全体が素屋根で覆われています。
「不滅の法灯」が灯る堂内は改修中も参拝することができ、あわせて改修の様子も見学できるようになっています。
地元の方以外は「延暦寺」と言えば京都のイメージですが、ここは滋賀県。工事の発注者も滋賀県知事になっていました。
参拝順路とは別に、見学のための通路が設置されていました。
根本中堂を出て参道に戻ると、正面に「万拝堂」があります。
「万拝堂」とつながる「一隅を照らす会館」の地下に、坂本にある「鶴喜そば」の比叡山店があり、こちらで昼食をいただきました。
乗り物利用の「比叡山横断」は歩く距離はあまりないので、参拝が目的ではなかったのですが、ゆっくりしてしまいました。
昼食後、再び「坂本ケーブル」へ向けて歩き始めます。
坂本ケーブル
延暦寺からケーブル駅へ向かって歩道を500mほど歩いて行くと、「坂本ケーブル延暦寺駅」が見えてきます。
こちらの駅舎は開業時から使用されているもので、登録有形文化財だそうです。
琵琶湖側はよく晴れていて、屋上や駅前広場のテラスからは琵琶湖の展望が広がります。
「坂本ケーブル」は延長が2000mを超える日本で最も長いケーブル路線で、ちょっとスタイリッシュな赤い車両が、麓の坂本と山頂の延暦寺の間を結んでいます。
琵琶湖の景色を眺めながら下ってくると、およそ11分の乗車で、こちらも登録有形文化財の「ケーブル坂本駅」に到着します。
ほぼ乗り物を乗り継いだだけですが「比叡山横断」を終え、帰路に向かって再び歩き始めます。
日吉大社の鳥居の前を通り、参道を琵琶湖へ向かって下っていくと、瀟洒なデザインの「坂本比叡山口駅」が見えてきます。
ここから京阪石山坂本線に乗って、京都へ戻ります。
京阪電車は琵琶湖を眺めながら田園地帯を走り、大津の街に入ると道路を走る路面電車になり、大津から京津線に乗り換えるとやがて地下鉄になってしまうというなかなかおもしろい電車でした。
蹴上から南禅寺へ
京津線から続く地下鉄東西線を「蹴上」で下車し、「蹴上疏水公園」へ向かいます。
この周辺には「琵琶湖疏水」の遺構が多く残されています。
桜が有名な「蹴上インクライン」も、冬枯れで遙か彼方まで視界が開けていました。
公園の奥の、発電所の方へ続く細い道を進みます。
遊歩道は「疏水分線」に沿って続いていきます。
やがて鐘楼の建物が見えてきて、道は「南禅寺」へと続いていきます。
南禅寺に入ると、境内はたくさんの観光客で賑わっていました。
琵琶湖疏水分線は、南禅寺境内にある赤煉瓦のアーチ橋の上を通っていきます。
寺院とアーチ橋の取り合わせも独特ですが、周囲を紅葉が囲み、美しい景観が見られました。
疏水はトンネルに入って、さらに続いていきました。
疏水を離れて参道を下り、北へ向かって歩いて行きます。
「永観堂」の前を通り、再び山沿いの疏水のほとりに向かいます。
哲学の道
トンネルを出た疏水に沿って、「哲学の道」が始まります。
初冬の「哲学の道」は人影もまばらで、まだ紅葉の残る道をのんびりと歩いていきました。
銀閣寺参道近くの「哲学の道北端」に着いて、今回の「比叡山横断ハイキング」は終了です。
様々な乗り物に乗り、歴史ある寺院や遺構を巡る、手軽で見所の多いハイキングでした。