今回の「函館の旅」では、函館山に歩いて登ってみようと思っていました。
夜景で有名な函館山ですが、遊歩道も様々なルートが整備されていて、気軽にハイキングを楽しむことができます。
今回は、昼間の函館山登山の様子と、合わせて夜の夜景について紹介します。
函館山とは
函館山山頂には函館の街を一望する展望台があり、ここから見る夜景は超有名なので、誰もが一度は目にしたことがあると思います。
函館の街はこの山の麓に開かれ、山の斜面に通る坂道の周辺には古い教会や洋館などが残されていて、エキゾチックな景観を生み出しています。函館は、今も明治期の雰囲気が残る街です。
海に飛び出した半島の尖端に聳える函館山は古い火山で、登山道を登っていると、ところどころに溶岩が顔を出しています。
そして、かつては島だったのですが、砂などが堆積したことによって陸続きになり、現在の半島になりました。
半島の入り江が天然の良港であったため、明治時代になると函館港は諸外国への窓口として開かれ、様々な歴史の舞台になりました。
黒船のペリーも来港しているし、戊辰戦争の戦場となり新選組の土方歳三が最後を迎えた地でもあるし、同志社を創設した新島襄が海外へと旅だったのも函館でした。
そんな函館のシンボルである「函館山」に登るのは、今回の旅の目的の1つでした。
第2次大戦まで全山が軍事施設であったため、一般人が立ち入ることができず、かつての自然が多く残されています。
そしてクマのいない山なので、1人でも安心して歩くことができます。
歩いて函館山へ
朝7時に函館駅に着いたあと、まずはすぐ近くの「朝市」の様子を見に行ってみました。
観光客の多い季節ではないし、朝市も今は観光客相手の商店街といった感じになっているので、本格的に営業を始めるのはもう少し遅い時間になるようで、本来の「市場の朝」という感じではありませんでした。
そんなわけで、とりあえず駅前のコンビニで市電の「1日乗車券」と朝食を購入し、市電に乗って函館山の麓へ向かいました。
市電を「十字街駅」で下車し、山へ向かって南部坂を登って行きます。
坂道の途中に「函館山ロープウェイ」の山麓駅がありますが、朝はまだ営業していませんでした。(ロープウェイの運行は10:00から)
函館山山頂へ続く「道道675線」に出て登っていくと、冬季閉鎖のゲートが見えてきます。ゲートはまだ閉鎖されていました。
ゲート手前にある駐車場のすぐ近くに「函館山ふれあいセンター」があり、登山道はこのふれあいセンターの前から始まります。
ここが「旧登山道コース」の入口になります。
旧登山道コース
「旧登山道コース」は、函館山登山のメインルートといった感じで、最も歩く人が多いコースです。
山頂までのコースタイムはおよそ1時間。手軽な距離感で地元の方々も気軽に登っているようで、たくさんの方が訪れていました。
登り始める前に、ふれあいセンター前のベンチで朝食にします。周囲には「カタクリ」の花がたくさん咲いていました。
ふれあいセンターを出発し林の中の道を進んでいくと、まもなく車道に出て登山道は車道を横断していきます。
登り初めは何回か車道を横断しますが、この時点ではまだ冬季閉鎖中だったので車両は走っておらず、山の中は静かでした。
その後車道を離れると、登山道は車が通れるくらいの広い道がずっと続いています。
道端には「〇合目」の表示板が設置されていて、どの辺りまで登ったかわかるのがありがたいです。
早春の沿道には、ところどころ雪が残っていたり、「カタクリ」の花が咲いていたりしました。
広い登山道は山頂近くまで続いていて、曲がりくねっていますが傾斜は緩やかで、かつては車道だったと思われました。おそらくジムニーのような車なら、山頂まで走れるのではないかと思います。
途中には溶岩の露頭があったり、野鳥観察小屋(現在は老朽化のため閉鎖)があったりして、自然観察路でもあります。
登山道の分岐点などにはしっかりした案内板が設置されているので、迷うようなところもありませんでした。
高度が上がると、樹林の間から、山頂の建物や街の景色が見えるようになります。
7合目を過ぎると「つつじ山駐車場」があり、周囲の展望が開けます。
ここからは、階段の道を登って展望台を目指します。
階段を登りきり広場に出ると、ロープウェイの山頂駅が見えてきます。
ふれあいセンターからここまで、ちょうど1時間でした。
函館山展望台
登山道を歩いている時は、けっこうたくさんの方が歩いていたのですが、みんなウォーキングに来ていたようで、展望台まで来ている人は誰もいませんでした。
春のよく晴れた日でしたが、車道は冬季閉鎖解除前で、ロープウェイも営業を始める時間前だったため、本当に人がいなくて、たった1人で展望台からの眺めを独占していました。
遠くに「駒ヶ岳」の鋭く尖った姿が見え、函館の街が一望のもとです。うららかな春の日差しの中で、ちょっと贅沢な時間を過ごしました。
9:30になると試運転なのでしょうか、ロープウェイが動き始めました。
しばし眺めを楽しんだ後、観光客がやって来る前に展望台を離れて、立待岬への道を歩き始めました。
立待岬へ
ここから半島の尖端である「立待岬」まで歩いて行きます。
「つつじ山駐車場」の奥にはゲートがあり、この先には車両は入れませんが、徒歩で「千畳敷コース」を歩いて行くことができます。
その前に、つつじ山駐車場のすぐ近くに、函館山が軍事拠点だった頃の遺構が残っているので見学していきます。
御殿山第2砲台跡
ゲートを抜けたすぐのところに階段があるので、丘の上へと登って行きます。
藪の中の細い道を進んでいくと周囲が開け、石造りの砲台跡が見えてきます。
函館山には明治期に、日露戦争を想定して津軽海峡の防衛強化のための「砲台」が建設されました。
その遺構が現在も残っていて、自由に見ることができます。
「御殿山第2砲台跡」には、丸い砲座が全部で6基残っています。
日露戦争当時、実際には一発の砲撃もされなかったそうですが、120年も前のものとは思えないくらい、美しい石垣が残っています。
千畳敷コース
「千畳敷コース」は徒歩でしか通行できませんが、道は林道なので歩きやすく「山上の散歩道」という感じです。
函館山の津軽海峡側は、急な斜面で落ち込んでおり、要塞らしい山容です。
「牛の背見晴所」を過ぎ、無線中継所のアンテナをめざして歩いて行くと、広々とした「千畳敷広場」に出ます。
千畳敷は広い芝の広場で、休憩所やトイレなども整備されています。
また、千畳敷の近くにも「戦闘司令所跡」など戦時中の施設の遺構が残っています。
地蔵山~七曲りコース
千畳敷から先の「地蔵山コース」「七曲りコース」は、林道が終わって山道になります。
特に「七曲りコース」に入ってからは、つづらおりの急坂になるので、足元に注意して歩きます。
下りなので疲れはありませんでしたが、登りだとけっこう大変かもしれません。
七曲りコースの登山口は崩落があり、仮設の梯子になっていました。
車道に合流し、函館山の登山を終えました。登り初めからの全行程は3時間ほどでした。
函館山のハイキングは、手軽でバラエティに富んだ楽しい山歩きでした。時間的にも半日なので、函館観光に組み込んでみるのもおもしろいと思います。
立待岬
下山後、「立待岬」へ行ってみました。
岬の周辺は公園になっていて「与謝野寛・晶子の歌碑」などがあり、近くには「石川啄木」の墓もあります。
山の上を歩いている時から、津軽海峡方面から雲が広がってきていたのですが、下山の頃には函館の街はすっかり霧に覆われて、立待岬はホワイトアウト状態で何も見えませんでした。
函館山の夜景
函館山に歩いて登り、昼間の景観を存分に楽しんだのですが、函館山といえばやはり「夜景」です。
夜景も見ないわけにはいかないということで、夜の直行バスで、再び山頂展望台へ行ってみました。
「ロープウェイ」は山麓駅まで市電やバスで移動してから乗車しなくてはならないのですが、函館駅前発着のバスを使えば、より手軽に夜景を見に行ってこられます。
函館駅前から「直行便」が出ているので、出発の時刻に合わせて乗り場へ行き、下車するときに500円払うだけなのでとても楽でした。
「夕食の前にちょっと見てくる」といった使い方ができるので、駅前を拠点にしている方にはおすすめです。
完全に日が暮れてから行きましたが、人出は多くはなく、けっこうゆっくりと見ることができました。
麓にある「ハリストス正教会」などが、ライトアップされているのもよく見えました。
関連情報
函館山へ徒歩で登るルートはいくつかあります。
今回の「旧登山道ルート」は道がよく整備されていて歩きやすく、傾斜も緩やかなので、初めての方はここを登るのが無難だと思います。時間もだいたい1時間です。
トイレはコース上の各所にあるので、案内図を参照してください。
今回歩いたルートは、前半と後半でかなり様相が違いました。
山頂から千畳敷広場までの「千畳敷コース」は林道歩きなので散歩のような感じですが、地蔵山から立待岬の間は山道で、特に「七曲りコース」はつづらおりの急坂なので、ここを歩く場合は、しっかりとしたトレッキングシューズなどを用意した方がよいと思います。
登山の後、汗を流したい場合は、「谷地頭温泉」という日帰り入浴施設があるので、こちらを利用するのが便利です。ふれあいセンターや立待岬などの登山口から、徒歩20分ほどです。(6:00~22:00 大人460円 第2火曜休み)