桜の開花と共に、本格的な春がやってきました。暖かな日差しの下で、自転車で風を切って走るのが心地よい季節です。
行動を規制する措置は解除になりましたが、コロナの第6波が広がる中、三密や接触を避ける行動は変わることなく求められています。
そんな状況の中、今回は折りたたみ自転車を持参して、春の安曇野を走った時の様子を紹介します。
安曇野のサイクリングコース

標高の高い信州では、まだ満開には少し早かったのですが、桜を見ながらの気持ちのよいサイクリングが楽しめました。
ネットなどで安曇野周辺のサイクリングコースを調べると、安曇野市ではサイクリング関連の施設やサービスの整備を進めているようで、たくさんの情報がありました。
レンタサイクルも整備されているようですが、今回は自前の自転車で、安曇野を松本から穂高まで縦断してみることにしました。
自分の自転車というのは、別の記事でも紹介していますが、本格的にサイクリングをするための自転車ではありません。

一般的な街で乗るタイプの折りたたみ自転車で、ハードなコースを走るには向いていないので、コース的にも時間的にも、ゆるく走れるルート限定といった感じになります。
そんな中で選んだのが、「あずみ野やまびこ自転車道」の安曇野ルートでした。
あずみ野やまびこ自転車道

今回走ったルートは「あずみ野やまびこ自転車道」(長野県道441号線)という県が設置した自転車専用道路です。
この道路は安曇野市から塩尻市まで続いていますが、今回走ったのは安曇野の約17.5kmの部分で、走るだけなら2時間弱の行程だと思います。
ルートの大部分が「自転車専用道」として独立した道路なので、景色を見ながらのんびり走ることができ、平坦な盆地の真ん中を「拾ヶ堰」という用水に沿って走るので、坂道はまったくありません。
そのため負担が少なく、体力に自信のない方でも安心して走ることができます。
拾ヶ堰に沿った平坦なアルプス展望コース
あずみ野やまびこ自転車道の安曇野ルートは、すべて「拾ヶ堰」という、江戸時代に造られた用水に沿って設置されています。
「拾ヶ堰」は水田開発の歴史を学ぶ教材として、小学校の教科書にも掲載されている有名な用水だそうで、今回はこの拾ヶ堰の流れに沿って、取水口から排水口までを辿っていきます。
流れに沿うということは、傾斜的には終始下り道ということなので、体力的な負担も少ないということになります。
このコースならママチャリでも負担なく走り通せると思って訪れましたが、当日は風もなかったため、体力的な疲れはほとんど感じることなく走り終えることができました。
「あづみ野やまびこ自転車道」を走る(前半)

今回も、最近のマイブームである「ドライブ&ライド」の旅です。
今回の概要をまとめると、まず出発地点に近い島内駅に自転車をデポし、終点に近い穂高駅周辺に車を駐車して、JR大糸線で島内駅へ移動します。
そして島内駅から自転車を乗り出し、あずみ野やまびこ自転車道に入って終点の穂高まで走る、という内容です。
島内駅には専用の駐輪場がありますし、穂高駅近くの碌山公園の駐車場は、24時間無料で駐車することができます。
穂高駅~島内駅

今回、自家用車を駐車したのは、碌山美術館に隣接する「碌山公園」の駐車場です。
碌山美術館は開館前でしたが、駐車場は付属した施設ではなく終日開放されているので、朝早い時間でも駐車は可能です。碌山美術館を見学する場合は、サイクリングの後で。


駐車場からJR穂高駅までは500mほどで、線路沿いの遊歩道を歩いて10分弱です。駅のホームからもアルプスの山々がよく見えます。
ここからJR大糸線で島内駅へ戻ります。北アルプスの麓の田園地帯の真ん中を走る、約20分の列車の旅です。(運賃240円)


島内駅は無人駅ですが屋根付きの駐輪場があり、24時間無料で利用できます。自転車を回収し、春の安曇野へと乗り出します。
拾ヶ堰取水口からスタート

島内駅から奈良井川の堤防に出て、流れに沿って下っていくと、拾ヶ堰の取水口がある堰堤が見えてきます。
サイクリングコースは、ここから約15kmに渡って拾ヶ堰の流れに沿って続いています。



しばらく奈良井川の堤防の上を走りますが、やがて拾ヶ堰は奈良井川を離れ、西に向かって流れ始めます。サイクリングコースも平瀬橋を左に曲がり、奈良井川から離れます。
その先にはアルプスから流れてきた「梓川」があるのですが、意外なことに拾ヶ堰は地下へ潜り、梓川の下を通っていきます。
安定した水量を確保するために、わざわざ梓川を横切って奈良井川から水を引いたらしいのですが、江戸時代に大河を横切る工事をしたとは驚きです。(地下を通るようになったのは近代になってからの工事によるものです)


自転車道は梓川の堤防に出て、ここで「あずみ野橋」を渡ります。自転車、歩行者の専用橋です。

あずみ野橋を渡り終えたところに、拾ヶ堰の改修工事の記念碑と共に、トンネル掘削に用いられたシールドマシーンフェイスが置かれていました。
ここからは北アルプスを正面に見ながら、西に向かってほぼ真っ直ぐに走って行きます。




拾ヶ堰の堤防上を走って行くと、広々とした「豊科南部総合公園」があらわれ、この辺りから「桜並木」が始まります。
桜並木と道祖神の道

まだ花が咲き始めたところでしたが、約1.8kmに渡って続く桜並木は壮観です。残雪の山並みに桜の花が映え、いつか満開の頃に走ってみたいと思いました。



桜並木が終わり、国道147号線やJR大糸線の下を潜り抜けていくと、田園地帯が開けてきます。遮るものは何もなく、アルブスの山並みが目の前に広がります。




しばらく走って行くと、コース中最大の休憩所である「じてんしゃひろば」が見えてきます。



残雪のアルプスを背景に、咲き始めた桜や芝桜、新緑の芽吹きが美しく、周辺ではたくさんの方が写真を撮っていて、ドローンも飛んでいました。

「じてんしゃひろば」を過ぎても、田園風景は続いていきます。


やがて集落が見えてきて、この集落内で自転車専用道はいったん途切れ、車道の脇を走って行きます。集落を抜けると、再び自転車専用道が始まります。





「世界かんがい施設遺産登録記念碑」を過ぎると、拾ヶ堰は右へ大きくカーブしていきますが、その手前を右に折れて、道の駅「アルプス安曇野ほりがねの里」に寄って休憩を取ります。
道の駅周辺には菜の花畑が広がり、たくさんの鯉のぼりが風に泳いでいました。
ここは「サイクルステーション」にもなっていて、レンタサイクルの利用、返却ができます。
こちらでは昼食を購入することもでき、農産物直売所で地物食材の弁当を購入してもよいし、施設にある「かあさんのおむすびの店」で食事を摂ることもできます。
「あずみ野やまびこ自転車道」を走る(後半)
道の駅から穂高へ


道の駅から、再び拾ヶ堰沿いの自転車道に戻り、しばらくは集落の中を走ります。


間もなく、ルート中で最も広い道の横断になる広域農道との交差点に出ますが、交通量が多い時は、すぐ近くにある信号のある横断歩道を渡るのが無難です。


この周辺には、ルート中で唯一、スーパーやコンビニがあります。

「下堀公園」の一角に休憩所があり、このルート最後のトイレがあります。

春の安曇野を行く


集落を抜けると再び広い田園地帯になり、周囲には春の安曇野の景色が広がります。
何もない、遙か彼方まで延びている道をのんびりと進みます。

自転車道は、途中で橋を渡って拾ヶ堰の左岸右岸を移動しながら続いていきます。

途中に、青く彩られた「道祖神」がありました。

左右に均整がとれた三角形に見えていた「常念岳」の姿も、この辺りまで来ると形が変わってきます。

やがて堰堤があらわれ、拾ヶ堰は排水路につながっていきます、

穂高自動車学校を過ぎると、自転車道は「烏川」の堤防に出ます。
15kmに渡って安曇野を潤してきた拾ヶ堰の流れも、ここで烏川に合流して終点を迎えます。
烏川沿いを終点へ

拾ヶ堰が終わると、自転車道は烏川の堤防を下って行きます。この辺りまで来ると、サイクリング中ずっと見てきた常念岳は、ほとんど山に隠れてしまいます。


やがて緑と赤の鉄橋が見えてきます。烏川・穂高川に架かるJR大糸線と国道147号線の鉄橋です。

鉄橋の下をくぐると、「あずみ野やまびこ自転車道起点(終点)」の標識が立っていました。
あちこち立ち寄ったので予想より時間がかかりましたが、景観を楽しみながら走って、春の「あずみ野やまびこ自転車道」の旅を終えました。
わさび畑を見に行く

この後、穂高川の堤防に沿ってさらに下り、「大王わさび農場」を訪ねました。

堤防の道は、これまでの自転車専用道と違って車が走っているので注意が必要です。しかし交通量は多くはないので、それほど気にならずのんびりと走れました。沿道の桜がもう少しで満開という感じでした。


この堤防沿いの桜並木の傍らに、「早春賦」の碑が立っています。本当に「早春」に訪れることができました。
桜、菜の花、わさび田、残雪の山々といった、早春の景色の見所が詰まった絶景スポットです。早春賦の歌詞とは違って、この日は風も暖かかったです。
大王わさび農場

穂高川の堤防を離れ、「大王わさび農場」に向かいます。
穂高の人気の観光地ですが、まだ早春のためか、休日でしたが人出はそれほど多くはありませんでした。

ここでひと休みして、名物の「わさびソフトクリーム」をいただきました。思っていたほど辛くはなく、子どもでも大丈夫な味になっていました。
今は「わさびの花」が咲く季節ですが、わさびは根だけでなく、花や茎も食べられます。この時期は周辺のスーパーでも販売されており、爽やかな辛みがあっておいしいです。

わさび田が広がる場内には、澄んだ水がゆったりと流れていました。
春の安曇野の景色の中を、豊かな水と共に辿ってきた旅でした。
関連情報

「あずみ野やまびこ自転車道」は、景観が素晴らしく体力的な負担も少ないので、サイクリングが初めての人にもおすすめのコースだと思います。
案内表示は多くはないですが、ルートがずっと「拾ヶ堰」に沿っているので、迷うことはないと思います。
唯一、平瀬橋付近がわかりにくいですが、奈良井川堤防を離れて梓川方面に向かえば、自転車道の続きが見つかると思います。
トイレはルート前半にはいくつかありますが、後半は下堀公園より北にはまったくないので注意が必要です。
後半は田んぼの中の道をひたすら走る感じになり、トイレだけでなく休憩に適当な場所も少なくなりますが、周囲は田園地帯なので、どこでも休憩はできます。
広域農道との交差点周辺には、コンビニや大型のスーパー、ホームセンターなどがあるので、何か必要になった時は立ち寄って補充することができます。
コースを走る向きですが、取水口側を出発すれば水の流れに沿うので、基本的に終始下りになり走るのは楽です。しかし高低差はほとんどない(拾ヶ堰の傾斜角は1/3000とのこと、3km進んで高度差は1m)ので、どちらから走っても体力的にはほとんど気にならないと思われます。
景観的には、取水口側から走ると常にアルプスを正面に見ながらの走りになるので、こちらがおすすめだと思います。
今回はアルプスを見ながらゆっくり走りたかったため、自前の自転車で返却の必要がない走り方をしていますが、レンタルの場合は、穂高を出発点にして穂高へ戻るというルートになり、けっこう時間がかかると思います。
自転車のレンタルサービスは、各所にある「サイクルステーション」で利用できますが、穂高周辺に多いようです。走ることが目的ではなく観光の手段としてレンタルする場合は、穂高駅などを拠点にして穂高周辺を巡るのがよいと思います。
サイクリングコースは、「あずみ野やまびこ自転車道」の他にも、アルプス山麓を走るコース(アップダウンあり)などもあるようで、ネット上に情報があります。