この春は、自転車を利用して密を避けた楽しみ方を試しているのですが、今回は街中の観光に出かけてみました。
これまでは、郊外のサイクリングロードを走ることが中心でしたが、ワクチン接種が進み、各地でようやく人々の動きが見られるようになってきたので、街中の名所スポットを巡る旅をしてみました。
今回は、折りたたみ自転車を利用した、信州松本の湧水巡りの様子を紹介します。
名水の街「松本」
自転車を入手した当初の目的は「街巡り」的な観光を想定していたので、折りたたみ自転車もそれに適した車種を選んでいました。
しかし、これまでは専用のサイクリングロードを走ることが多く、当初の目的に沿った使い方はあまりしてこなかったように思います。
自然を満喫するサイクリングもよいのですが、今回は松本の街の中を、各地に点在する「湧水」を巡りながら走ります。
名水100選の湧水群
環境省選定の「平成の名水100選」には、松本市内に多数ある湧水が「まつもと城下町湧水群」として登録されています。
そして「名水100選選抜総選挙」では、「観光地として素晴らしい名水部門 第3位」とのことなので、一度見てみたいと思っていました。
これまでも登山の行き帰りなどで松本はしばしば訪れているので、「松本城」などの有名スポットは見ていますが、街の中の様子というのはあまり知りません。
「湧水群」があることを知り、今回改めて街中を巡ってみようと思ったわけですが、多数ある湧水を巡るには、「歩き」よりも「自転車」の方が短時間でよりたくさん巡ることができるので、折りたたみ自転車が活躍するよい機会になると思いました。
自転車で街中の湧水を巡る
あがたの森公園からスタート
今回、車を駐車したのは「あがたの森公園」の駐車場です。
旧制松本高等学校の敷地跡に整備された公園には広い駐車場があり、夜間は閉鎖されますが昼間は無料で駐車できます。
松本駅から真っ直ぐ延びる通りの突き当たりにあり、近くにはイオンモールがあるので、お土産の購入などにも便利です。
自転車を組み立て、ヒマラヤ杉の並木道を通り抜けて、駅方面に向けてスタートします。
途中で、ポップで鮮やかなデザインの建物が見えてきますが、これは松本出身の芸術家、草間弥生さんの作品を外観に配した「松本市美術館」でした。
あがたの森通りの脇にもこのような湧水があり、街の中に普通にあるのだな、と改めて思います。すぐ近くには「源地の水源地井戸」がある場所でした。
松本城南側
大通りから北へ向かい、さらに脇道に入って進むと、道の脇に東屋のある井戸がありました。
これが「源智の井戸」で、松本の湧水を調べると必ず出てくる代表的な井戸です。
説明板によると、こちらの井戸は松本が城下町になる以前から飲用水として利用されていたそうで、木枠に囲まれた泉からは幾筋もの水が流れ出しています。
源智の井戸のすぐ前にある瑞松寺にもこのような井戸があり、本当にあちこちに水が湧き出していると感じます。
源智の井戸から北へ進んで「中町通り」にやって来ました。蔵造りの建物が並ぶ、松本の観光スポットです。
この通りにある「観光案内所」に寄って、こちらのマップを入手しました。
ネットからも見ることができますが、手のひらサイズのコンパクトなパンフレットで、簡単な説明の付いたイラストマップが載っているので、湧水巡りをするなら持っていたいものです。
通り沿いの店先にも、普通に井戸が見られます。
中町通りにある「蔵シック館」は、元は造り酒屋の土蔵だそうで、催し物が行われたり喫茶店が入っていたりする中町観光の拠点といった施設です。
蔵シック館の前にも「蔵の井戸」があります。ここは手漕ぎポンプになっていて、家族連れで来ていた子どもがポンプを漕ぐと、勢いよく水が溢れ出てきました。
中町通りから善光寺通りに出て北へ進むと、すぐに女鳥羽川にかかる千歳橋の前に出ます。
千歳橋を渡ると、女鳥羽川沿いに「縄手通り」があり、車の入れない細い路地に小さな店が軒を並べています。
縄手通りの途中には「四柱神社」への入口があり、その参道の向かい側にも「なわて若がえりの水」が流れています。
周囲の木陰にはベンチもあり、通りを行く人たちの休憩所といった感じです。
縄手通りの途中から北へ向かって進むと、「辰巳の御庭」という泉のある小さな公園に出ます。ここは周囲にベンチやテーブルが置かれた休憩スペースになっています。
湧き出した水が、川になって流れていきます。
さらに北へ進むと、細い路地に「小松パン店」があります。
長野のご当地パン「牛乳パン」の有名店ですが、現在は予約販売のみという看板が出ていて、当日の購入はできないようです。
大名町通りに出ると、「松本城」は目の前です。
松本城北側
お城の北側へ向かう途中に、松本城公園の中を通っていきます。
松本に来たからにはやはり訪れたい場所です。
今回は公園内を通り過ぎるだけで、天守の周辺には入りませんでした。
おなじみの風景の写真を撮りながら、城の北側へ通り抜けました。
城の堀の北側には「松本神社」があり、ここにも井戸があります。
こちらはお城の駐車場に近いためか、観光客がたくさん訪れていました。
堀に沿って東へ走り、さらに北へ向かって「北門大井戸」へやってきました。
周囲から一段低くなった一角に、東屋のある井戸がありました。傍らには大きな柳の木が立っています。
この辺りは松本城の北門があった場所で、馬出の跡地だそうです。
さらに西に100mほど行くと、「北馬場柳の井戸」があり、こちらも傍らに柳の木が立っています。
ちょうど水を汲みに来ているご夫婦がいて、ペットボトルに何本も汲んで持ち帰っていきました。湧水が地域の生活に根付いている様子がうかがえます。
「旧開智学校」がすぐ近くなので、少し足をのばして見学してきました。松本城とともに、こちらも「国宝」です。
旧開智学校は、現在耐震工事のため休館中で、令和6年まで内部を見ることはできません。
女鳥羽川周辺
お城の東側を女鳥羽川方面へ向かって走り、「鯛萬の井戸」を目指します。
しかし入口の「鯛萬小路」に気づかず、一度通り過ぎてしまいました。本当に細い一人通るのがやっとの小路に、スナックなどが並んでいます。
小路を抜けた先に、大きな東屋のある「鯛萬の井戸」がありました。
こんな所にあるのかと思う場所でしたが、大きな水盤のある美しい井戸で、水量も豊富です。周囲は小さな公園として整備されていました。
いくつもの井戸で、観光客ではない水を汲む地元の人に出会いましたが、こちらでも近所の方が水を汲みに来ていました。
豊かな湧水が、しっかりと地域の生活に根ざしているのを感じます。
続いて女鳥羽川の東側に渡り、「槻井泉神社」の湧水を目指します。
ケヤキの巨木を目印に向かうと、その傍らに「槻井泉神社」が祀られていました。
湧水を湛えた泉には、ゆったりと錦鯉が泳いでいました。
再び女鳥羽川を渡って西側に戻ると、すぐに「女鳥羽の泉」があります。
こちらは造り酒屋の軒先にあり、この酒蔵はこの水を使って仕込んでいるのだと、この位置関係に納得します。
再度、女鳥羽川を渡って南側へ出ると、すぐに「伊織霊水」があります。
江戸時代に起きた加助騒動という一揆に関わった百姓たちの助命救済に奔走した武士、鈴木伊織の墓の前にあるため、この名がついているそうです。
さらに南に進むと、先ほどの「中町通り」の東に続く通りに戻ってきます。
この通り沿いにある神社、信州薬祖神社にも「日の出の泉薬祖水」があります。
さらに東に進むと、イオンモールの目の前に「日の出の井戸」があります。井戸とは言うものの現代的な造りで、休憩スポットといった感じでした。
松本城を中心に街中をほぼ一回りし、今回の「湧水巡り」はここまでにしました。
すべてを巡ったわけではありませんが、自転車を利用することで、短時間でいろいろな井戸を見て回ることができました。
終わりに
詳しい計画を立てたわけではなく、およそのルートを決めて、地図を見ながら湧水を訪ね歩きました。
「まつもと水巡り」パンフレットにあるマップを見ながら走りましたが、この地図はイラストですが道の位置などが正確で、とても役に立ちました。市内各地の案内所で配布しているので、湧水巡りの際は入手することをおすすめします。
松本の街の中心部は小さいので、徒歩でも見て回ることができますが、自転車だとこれだけの湧水を見て回っても2時間程度でした。
そして「街を自転車で巡る」のは、歩きとは違った魅力もありました。
移動のスピーディーさが、「あそこへ行こう」という興味や関心を、飽きることなく満たしてくれる楽しさがあるのかもしれません。
松本の街は各地に湧水があり、それが生活に根付いていることを感じさせてくれる旅でした。これまで知らなかった一面を見せてくれたように思います。
いろいろな街に、このような隠れた魅力があるのだと思います。それを探し巡り歩くのも楽しい旅になると思います。
松本市美術館
今回は昼からのスタートでしたが、時間に余裕があったので「松本市美術館」も見学してきました。
リニューアルオープンしたばかりのようで、「正倉院宝物展」や「草間弥生の特集展示」などを行っていて、こちらも充実した内容でした。
折りたたみ自転車は、このような街巡りにとても便利なアイテムです。時間的な余裕は様々な選択ができる余地を生むので、その地域の特色をいっそう楽しめるのではないかと思います。
コロナ禍でのリスクを感じる場面もなく、街の雰囲気を感じながらの湧水巡りでした。