【地方移住】を考える2021 移住は本当におすすめなのか

地方移住を考える

コロナの影響でテレワークが普及し、仕事の仕方が大きく変化する中で、住居がどこであっても仕事ができる状況が生まれています。

「地方移住」が話題になり、この機会に、仕事をしながら自然豊かな地方暮らしに移行したいと考える人も増えているようですが、実際にはそうした動きは多くはない、とも聞きます。

今回は、今話題の「地方移住」について考えてみたいと思います。

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移住を考える前に

学生のような自由な身分なら、誰もが何処でも暮らせると思います。しかし仕事を持ち、家族がいて、将来も考えなくてはならない年齢なら、憧れだけではない現実的な選択がどうしても優先されます。

移住の計画は、この先の人生において、自分にとって、あるいは家族にとってプラスになるという確信があって初めて進められるものです。

移住することに仕事の面でメリットがある場合はよいのですが、そうでなければ、趣味や私生活の充実と、都会での暮らしを手放すことのリスクをよくよく考え合わせなければなりません。

少子化のこの時代、地方の人口は減少し続けていますが、一方で都会の人口は増加しています(自然減を除く)。自然豊かな地方暮らしは魅力もありますが、この事実が何を物語るのかは、しっかり考えておいた方がよい問題です。

捉え方も生き方も、人によって様々なので、答えはありません。

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地方移住で得るもの

自然の中で余暇を楽しむ

私は現在、東京に日帰りできる距離にある地方都市に住んでいます。

仕事の関係で住み始め、移住をした人間ではありませんが、私も地方に暮らすメリットを感じることがあります。

こういうブログを書いている者なので、山登りやハイキング、ドライブやツーリングなどに出掛けるのに適した場所が、都会に比べて近くにあるという点です。

車で少し走れば自然の中に身を置くことができるし、アプローチとなる移動が短くて済むので、日帰りであちこちに行きやすくなります。

周辺にはアウトドア関連の施設もけっこうあり、気軽に出かけられるという魅力もあります。

また、都会では日常的に出会う「喧噪」という場面がほぼありません。現在のようなコロナ禍の状況では、人との密接を避ける行動が求められますが、普段の生活でもそれがさほど難しくない環境で、当然感染リスクも低いと思われます。

生活の負担を減らす

物価も全体的に都会よりは安く、特に住居に関してはその差が大きいと感じます。

家を持つ負担感は都会の半分以下と言えるかも知れません。基本的に地方は車社会で、成人なら一人一台持っているといった家庭が多いのですが、それでも都会の住居にかかる費用ほどの負担は感じない気がします。

自分の家を持ったり、車やバイクを所有したり、趣味の道具の置き場所にも困らない環境が、都会よりはるかにリーズナブルに手に入ります。

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地方移住で失うもの

元々地方に住んでいる人がまた地方へ移住するのであれば、ほぼ問題がないと思います。しかし、東京のような大都会から地方へ移住する場合、生活はかなり変化します。

ネット環境の発達した現代の社会では、地方に暮らしても仕事や友人との関係性の維持などの心配はあまりないので、問題の多くは、リアルな生活と精神の部分になります。

生活を変えるために移住する、という明確な自覚がある人は、違った環境を大いに楽しめばよいのですが、都会で育ち生活してきた人が、その意識を変えることなく移住するのであれば、心配の方が大きいです。

体も心も身動きできない・・

都会のような発達した交通網がない地方暮らしだと、自家用車が必要不可欠です。鉄道、地下鉄、バスなどの交通機関が充実した都会では、身一つで何処へでも移動できますが、地方では車がないと日々の食料の買い物にも苦労する所ばかりです。

しかし、こうした点は、その土地の生活スタイルに慣れてくれば、どうにでも対応できる問題です。

最も大きな違いは、都会の消費環境、社会の中枢機能、生まれ出て渦巻く文化といった何でもある現場から離れ、享受してきた多くのものを手放すことになるということと、新たに田舎の価値観の中で暮らしていくという生き方を受け入れられるかに関わる部分です。

都会にはあらゆる仕事があり、様々なカルチャーの中心として動いています。都会暮らしの人は意識していませんが、そういう恩恵を受けて人生を豊かにしているのです。

実は、これが都会を離れられない人たちの最も大きな理由だと思います。

ネットに流れるものだけで満足できるなら問題ありませんが、田舎にはリアルに触れる多様な文化はほとんどなく、それを求める人は、地方にいても東京まで出掛けていきます。

地方の若者が都会を目指すのは、やりがいのある仕事や新たな世界を求めているのと同時に、地方の小さなコミュニティーでは満足できないことや束縛されると感じることが多くなり、そこから飛び出したいという気持ちもあるのだと思います。

そうして人々は都会に集まり、都会から離れなくなる。それが地方の人口が減り続け、都会の人口が増えている一つの答えだと思います。

「都会にあるそうしたことには関心がない」と断言できる人であれば、移住を考えてみる価値があると思います。

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田舎暮らしというもの

私はいわゆる地方に暮らしている人間ですが、徒歩10分ほどの範囲に鉄道の駅やショッピングモールもある街中で暮らしています。

地方ではあっても、都会に近い環境だと思います。基本的に「田舎暮らし」をしたいとは思っていません。

田舎の共同体の一員

昔、鉄道の駅まで歩いて行ける距離ではなく、その鉄道も1時間に1本あるかないかの田舎に住んでいたことがあります。

こういう場所にいると、都会暮らしだと不必要な時間がたくさんかかります。通勤にも買い物にも、たくさんの移動時間や待ち時間が必要になり、無駄に感じる時間が多い生活を受け入れなくてはなりません。

地理的な問題だけではありません。

電気や水道は田舎でも普通に利用できますが、ガスはプロパンガスのボンベを業者に運んできてもらう形になり、いつもガスの残り量を把握している必要がありました。都会では気にしなくてもよい生活の細部も、放っておくと困ることが起こってきます。

さらに気を遣うのが近所付き合いです。

田舎に住むということは、ほぼ必ず「共同体の一員」として暮らすことになります。

元々の住人ではないので特別なことはしなくてもよかったのですが、どこの地区にも行事や環境整備があり、一例を挙げると、そこでは月に一度日曜日の朝早くに「どぶさらい」がありました。

地区の方々が集まり、みんなで協力して環境美化の活動を行い、参加できない場合には、出不足といって幾らかのお金を供出するというものでした。

家にいるのに出ないのは気まずいので、休日が本当の休日ではなくなり、ちょっと落ち着かない日になります。

一軒家だと、家の周りの草なども放っておく訳にはいかず、それなりに草取りをしてきれいにしておかないと、周辺の住民から苦情が来ることもあるようです。

都会のように、隣人に無関心という人はほぼいません。

教育環境

家族がいて子どももいる人だと、教育に関しても気になると思います。

地域の人間関係もそうですが、学校も何事に関しても関係が濃密なので、それにはまればよいのですが、馴染めない場合は逃げ場がありません。

進学も都会よりは大変だと思います。

田舎では学校と言えばほぼ公立しかないので選択肢がなく、高校になると多少私立の学校もあるのですが、田舎では基本的に公立が優位で、みんな公立を目指します。

都会なら様々な選択ができ、むしろ私立は特色ある教育環境を求めてゆとりのある家庭が選択するという面もあるのですが、一般的に田舎で大学進学を目指すには、公立小中から公立進学高というルートしかありません。

東大生の半数以上が、東京とその近県出身者で占められている事実を見ても、地方出身者の大学受験が都会より厳しいことは否めないと思います。

頼るべき情報もネットを通じたものが中心で、環境に頼らず自らの意思で学ぶことが前提になるのが地方の受験生です。

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地方移住をするなら

ここで地方移住についての考えをまとめてみます。

①基本的に都会で長く仕事をし生活している人に、地方移住はおすすめしません。

すでに都会で生活の基盤となる仕事と収入を得ている人の多くは、おそらく地方では満足できません。都会の豊かな生活を享受しつつ、余暇に地方に出掛けるのが妥当な選択だと思います。

②今の生活スタイルをできるだけ変えずに移住するなら、地方の大きな都市がよいと思います。

生活費や住居環境なども考え合わせて、主に現実的な側面から移住を考えているなら、地方であってもそれなりの規模の都市に住むことが基本だと思います。田舎は都会とは別世界であることをしっかりと理解し、都会に近い環境を選択することが必要です。

③自然環境を重視して場所を選ぶなら、観光地と言われる所かその周辺がよいと思います。

田舎で暮らすということは、多くの場合都会暮らしの人には難しいです。それでも自然環境重視で移住を考えるなら、観光客を目当てにして整備されたリゾートの町やその周辺がよいと思います。住宅環境の整備などをやってもらえるサービス業が存在したり、行きたいと思える店舗が近くにあったりします。本当の田舎にはそういうものはありません。

お試し移住

すでに気持ちが移住に傾いている、という人もいるかもしれません。そういう人には、移住の前に一度住んでみることをお勧めします。

転勤できるならなおいいのですが、自由がきくのであれば、とりあえず部屋を借り、1ヶ月でも半年でも住んでみると街の雰囲気が分かります。

晴れている日が多いとか少ないとか、雪が降るとどんな状態になるのかとか、気候や暮らしぶりなども分かります。

また、多少なりとも生活をすれば、買い物環境やどんな学校があるのか、交通機関の便利さはどうかなど、実際に暮らすことで分かってくることがたくさんあります。

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おわりに

移住は一言で言えば、環境の変化を楽しむものだと思うのですが、旅のような一時的なものではありません。

多くの費用をかけ、新しい環境に馴染めるかわからないリスクを取っても地方への移住を考えるのは、今の環境が馴染まない、離れたい、と本気で思っている人だけにした方がよいと思います。

地方移住は、積極的にそのメリットを生かしたいと考えている人にのみよさがあり、はっきりした目的と展望がないのなら、やめておいた方がよいのでは、というのが率直な感想です。